【SVシングル S15 最終464位 レート2006】満ちる器

【SVシングル S15 最終464位 最終レート2006】

 

「満ちる器」

 

TN:husky


【1.はじめに】

今回を除けば、私がレート2000を達成したのは過去に一度だけで、一年近く前に遡る。
SVからランクバトルを始めて、シーズン1の最終日のバンビーさんといろはさんの動画に感動して、もっと上手くなりたい、とガキみたいに思って、生まれて初めて構築記事というものを読み漁って、いつかこんなのが書ける順位をとりたい、と夢見て、ひたすら上達を志していた、あの頃。
その小さな夢は、シーズン4で叶った。
たぶん、私が持っている本来の力からすれば、早すぎたのだろう。


結局、運がよかったのだ。
運勝ち、という意味ではない。
一年前の無知な私が、たまたま環境にそれなりに適した構築を作れた、という運である。
要するに、シーズン4のお前の結果はフロックだ、ということだ。


私は強くなっている。必ずまたレート2000がとれる。そう思いたかった。
けれどその度に、調子に乗っていた過去の私が「でも俺は1ロムでレート2050超えたけど?」と嘲笑ってきた。さすが私というだけあって、実に感じの悪い奴だった。


2/27の深夜の時点で、メインが1990、サブが1977だったが、サブから潜って、いっきに1860まで溶かした。
サブのレートを戻すという薄い希望にすがるより、メインの一戦に賭けた方が可能性が高いと判断して、2/29の午前10時、レート1990から潜った。
これさえ勝てれば、という試合だったが、初手ブリジュラスが相手のガチグマにミラーコートをケアされて欠伸を撃たれ、耐久型キラーのディンルーの地割れはカイリューにすかされ、コノヨザルのドレインパンチをガチグマの毒テラスタルで切り替えされ、やりたい放題やられて、こちらは残りブリジュラス一体(先発から引っ込んでHPは満タン)、相手はほぼ無傷の持久力ブリジュラスと、裏にはマルチスケイルの残ったカイリューが控えていた。
降参がよぎった。
が、妻が後ろで見ていた。
私が何かを諦めそうになる度に、「ミスト」という映画のラストを引き合いに出して、最後まで何があるかわからないから諦めちゃ駄目なん、と諭す妻だった。
私は苦笑しながら、細い細い、唯一の勝ち筋を追った。
それは、私のブリジュラスが相手のブリジュラスに対して竜星群を撃たずに、かつ、頑丈を残して突破すること、すなわち、悪の波動で2回続けてひるませることだった。
その確率、4%。
無心で一発目を撃った。

「ブリジュラスは ひるんで 技がだせない!」

そのとき、どういうシステムなのか全く理解できないのだが、頭の中で「ジョジョ」風のエフェクトが発動した。

ゴゴゴゴゴゴ……

「次の一撃でブリジュラスが怯む確率はッ!もはや決して4%ではないッ!たとえ100万回悪の波動を撃っていたとしても!今ッ!!この瞬間の一撃で怯む確率はッ!……20%だァアアアア!!」
もちろん、そんなことを声に出して言うと離婚事案になる可能性があるので、現実の私は「怯め」と冷酷に言い放っただけだった。

「ブリジュラスは ひるんで 技がだせない!」

ラスターカノンからの竜星群で相手のカイリューを破って、私は床に倒れ込んだ。

この一年間の、色々な場面がよぎった。
初めて三桁をとったシーズン4の最終戦、HPが1ずつ残った同速の襷セグレイブ同士の礫の撃ち合い。
シーズン4以来ずっと振るわず、もう二度と三桁なんてとれないんじゃないかと怯え続けた時間。
それを救ってくれたシーズン9の襷イダイトウ。お墓参りを撃つ度に、「The Last Respect!」(←お墓参りの英名)と叫んだこと。
シーズン5での墜落以来、ずっと避けていたディンルーを強く使えたシーズン12。
私はもう若くない。いつまで潜る気になれるかもわからない。
ただ、今の瞬間には、マジになれるものがあって、嬉しかった。

器が、災いではなく、別の何かで満ちてゆくのを感じた。

こみ上げてくるものがあった。
それをごまかしたくて、「たかがゲームだ」と声に出して私は笑った。
それなのになぜ、涙が溢れるんだと、私はまた、笑った。

 


感動的な結末を読んだ気になって満足しているあなた、構築記事は、ここからです。
ちゃんと読んで下さい。

 


【2.構築の経緯】

ここ数シーズンでADチョッキディンルーを使い続けており、使用感も愛着も抜群だったので、今回もチョッキディンルーを軸に組み始めた。
ADチョッキディンルーの強みは、環境トップのハバタクカミがどんな型で何をしてこようがほぼ対面で負けない、という点にある。しかも、相手視点ではそれが見えない。
しかし、ハバタクカミを出してもらわないことには始まらない。ADチョッキディンルーは、物理三体、みたいな選出をされると腐りがちになる。
そこで、構築に意図的にフェアリーを一貫させて、相手のハバタクカミが出てきやすい状況を作ることを決めた。


ディンルーでハバタクカミを突破した後、カイリューの積みの起点になる展開をある程度回避するべく、その手の切り替えし性能が自慢のものまねハーブコノヨザルを今期も採用した。


安定した初手枠として、頑丈ブリジュラスを採用。
ジャポの実とミラーコートで素晴らしい対面性能を誇るが、シーズン終盤はガチグマが平気で欠伸を撃ってくるなど、結構読まれていた。


シーズン序盤、ドヒド&ディンルーにかなりやられたのと、グライオンが面倒だったので、見えにくい崩し枠としていかさまダイスキノガッサを採用。


続いて、何か強いらしいという噂のタケルライコを採用。


以上の五体はシーズンを通じてほぼ不動であり、ブリジュラス・ディンルー・コノヨザルの三体選出が半分以上の試合を占めた。


最後の一枠は、イダイトウ@イバン、連撃ウーラオス@襷、ハバタクカミ@眼鏡か襷、など流動的だったが、最終的にはパオジアン@襷に落ち着いた。


ここまで、何と6体中5体がフェアリー弱点の上、地面まで一貫するという欠陥構築だが、そんな構築でなぜレート2000に到達できたのか、乞うご期待。

 


【3.構築のコンセプト】

○相手の認識をずらして対面で殴り勝つ。
○意図的にフェアリーを一貫させて、相手のハバタクカミを誘って狩る。

 


【4.メンバー紹介】

①ディンルー@突撃チョッキ
※特性:災いの器
※性格:意地っ張り
努力値:H0/A252/B4/C×/D252/S0
※技構成:地震、ヘビーボンバー、テラバースト、地割れ
※テラスタイプ:フェアリー

構築の軸。
「さすがに落ちるだろ」と放たれるムーンフォースやらハイドロポンプやらブラッドムーンやらを余裕で耐え、相手のプランを崩壊させる鹿の化け物。
AD極振り、特殊相手に限定して考える限り、異常な対面性能を誇る。
例えばだが、眼鏡ハバタクカミのフェアリーテラスタルムーンフォースを素で耐えた後で、テラスタルを切ってテツノツツミのフリーズドライを耐える、とか。ヤバすぎる。
特に、環境トップのハバタクカミに対して、眼鏡だろうが襷だろうがブーストエナジーの耐久振りが甘えてこようが、テラスを切らずに対面で負けない点が素晴らしい。相手にハバタクカミを選出してほしくて、構築は意図的にフェアリーを一貫させた。
このディンルーをもって、「フェアリーが一貫する」という本構築の弱点は強みに変わっている。
おそらく相手の想定するどんなディンルーよりも特殊に硬く、どんなディンルーよりも火力に秀でていたのではなかろうか。度を超えた特殊耐久で相手を裏切り、「これだけ硬いってことは火力はそんなにないよな」という目算をさらに裏切る、裏切りの鹿。
選出率は九割を超えていたと思う。
技構成は、汎用性の高い地震、対ハバタクカミ兵器のヘビーボンバー(これがないと耐久振りが甘えてきたときに怪しくなる)、カイリューやウーラオスに不意に抜群をつけるテラバースト、最終兵器の地割れ。

地割れは、月の光ガチグマ、ポリゴン2、持久力ブリジュラスなどを想定して入れたが、そのような相手への地割れは外れまくって、何だかなあ、という感じだった。ポリゴン2いなかったし。代わりに、不利な物理相手などに対して「もう駄目だ」と撃ったのが一発で当たったりしたことももちろんあり、特にカイリューの羽休め読みで一日に三度も地割れを当てたときは、申し訳なさで笑いが止まらなかった。地割れが当たらなければ負けていた、という試合よりも、地割れ以外の技があれば、という試合は圧倒的に少なかったので、上振れを生む手段として、採用してよかったと思っている。
強いて言えば、欲しかった技はしっぺ返しで、これがないと、本来カモであるはずのラティ兄弟が鋼テラスタルを切ってきたときに打点がない、という事態になるのが実に気に入らなかった。
ラスタルを切る場面は、「ここで切ればほぼ二体もっていける」と判断したときや、相手のドラゴン技に対しての切り替えし、なめて出てきて剣の舞を積む一撃ウーラオスに対しての切り替えしが多かった。

 

キノガッサ@いかさまダイス
※特性:テクニシャン
※性格:意地っ張り
努力値:H4/A252/B252/C×/D0/S0
※技構成:種マシンガン、マッハパンチ、地ならし、剣の舞
※テラスタイプ:炎

崩し枠にして、選出誘導枠。
選出のときは常に、「相手が誰でガッサを見てくるか」ということをスタートに考えるようにしていた。選出の道筋を開いてくれたことが、最大の貢献かもしれない。
基本的には受け構築を破壊する役割を担っていたが、結構な対面性能を誇るため、通りそうな相手には積極的に投げていた。私はいかさまダイスキノガッサが大好きで、だいたいの構築に投げたくなる癖があるので、その点は常に自戒していた。
いかさまダイスキノガッサは、「キノガッサ対策が実は対策になっていない」というのが本当に強く、
後投げで出てきた水オーガポンが種マシンガンとマッハパンチで何も出来ずに落ちたり、初手で守ってくる全てのグライオンに対して剣の舞を積んでハイパーキノコに化けたり、崩し枠以上の活躍をしてくれた。
技構成は、種マシンガン、マッハパンチ、剣の舞までは確定。
個人的にいかさまダイスキノガッサは、カイリューとサーフゴーのどちらかに対して何も出来なくなるのを受け入れるしかないと思っている。
(剣の舞を切れば話は別だが、それだと、崩し枠としては物足りなくなる。)

今回はサーフゴーへの打点で地ならしを採用したが、カイリューに対して無力なのはやはりきつかった。

努力値をBに振ったのは、とにかく先制技を撃たれるのと、炎オーガポンを出されるので、炎テラスタルを切った後、相手の蔦棍棒と炎テラスタル棍棒を受けても生き残るようにしたため。

 

③コノヨザル@ものまねハーブ
※特性:負けん気
※性格:腕白
努力値:H228/A4/B236/C×/D4/S36
※技構成:ドレインパンチ、憤怒の拳、岩石封じ、挑発
※テラスタイプ:水

3シーズンくらい使い続けている自慢のコノヨザル。

ほぼHBに振っており、パオジアン@鉢巻with悪テラスタルの噛み砕くを耐える、連撃ウーラオス@鉢巻の水流連打を耐える、一撃ウーラオスの剣の舞→暗黒強打を耐える。

特に裏から出ていくコノヨザルはナメられて積まれるのが、物理の積みアタッカーへの渾身のアンサーとしてのコノヨザルがこれである。

切り返し性能が素晴らしく、例えば、ディンルーがハバタクカミを倒して2対1の数的有利をとった後、ラストにカイリューが出てくる、という光景を今シーズンだけで二百回くらいは見たが、そのような局面で、コノヨザル引きがかなり安定する。
カイリューが竜の舞ならばコノヨザルがものまねハーブからの岩石封じで勝負になるし、逆鱗を撃たれたらコノヨザルは倒されてもディンルーのフェアリーテラスタルで封殺できる。

Sは気休め程度に、Sに20振った霊獣ランドロスを抜けるようにしてある。岩石封じを撃った後に抜ける相手を増やすにはもっと振りたいのだが、耐久も削れないので、難しい。

剣の舞を積んだ後のウーラオスの水流連打を耐え、テラスタイプは水。


④タケルライコ
※特性:古代活性
※性格:控えめ
努力値:H148/A×/B140/C220/D0/S0
※技構成:放電、迅雷、竜の波動、瞑想
※テラスタイプ:フェアリー

よくわからないまま、シグマさんが弱点保険で紹介していた型を使い始めて、努力値配分はそのままで食べ残しに変える、という雑な使い方をしていたのだが、強かった。
特に、連撃ウーラオスに対する圧が素晴らしい。

迅雷択と食べ残しの相性のよさは言うまでもなく、さすが元の努力値配分が弱点保険型というだけあって、大体一発は耐える点もありがたかった。

放電は、鈍足揃いで下振れを引きやすいこの構築における数少ない上振れ要素であり、命中安定である程度の威力を確保しつつ、サーフゴーにすら三割のリスクをつけられるのが優秀すぎる。

選出のタイミングがイマイチつかめず、機会自体は少なかったものの、出た試合ではきちんと活躍してくれた。

 

⑤ブリジュラス@ジャポの実
※特性:頑丈
※性格:控えめ
努力値:H0/A×/B4/C252/D0/S252
※技構成:ラスターカノン、竜星群、ミラーコート、悪の波動
※テラスタイプ:ドラゴン

初手での対応範囲の広さが素晴らしいポケモン

最も多く初手で投げた。

そして、相手に応じた動きをシステマチックに決めていた。

ジャポ込みで倒れそうな物理には竜星群、パオジアン・キラフロルにはラスターカノン、赫ガチグマ・アシレーヌ・眼鏡っぽいハバタクカミやテツノツツミにはミラーコート、サーフゴーには悪の波動、ブーストエナジーのハバタクカミとイーユイ(どうせ悪の波動)はディンルー引き。

困ったのは、初手のウーラオスがトンボからハバタクカミに引く、という洒落た動きで、これには結構やられた。インファイトから入ってくるウーラオスも普通にいて、明確な解答を最後まで用意できなかった。

また、最終戦然り、終盤にはガチグマが平気で欠伸を撃ってきて、ミラーコートはかなり読まれていたように思う。

明確に初手で投げなかったのは、グライオン、ディンルー入りの構築。両者に対しては火力が足りず、キノガッサで刺しにいっていた。

技構成は、最高打点の竜星群、無難な一致打点のラスターカノン、特殊高火力で仕留めにくる相手にミラーコート、最後の一枠は、ステルスロックドラゴンテールも使ってみたが、こちらにキノガッサがいる都合上、初手でぶつかる可能性のあるサーフゴーへの打点として、悪の波動。これが思わぬ形で最終戦の奇跡を生んだ。

テラスタイプは、どうせ切らないだろ、という中で何でもよかったのだが、一応、竜星群の火力をあげられるドラゴン。シーズン中、一度しか切らなかったが、その一度は、たぶんこれのおかげで勝てた。

命中不安技が嫌いで、竜星群を撃つ機会が多すぎるのはどうにも気になったが、しょうがない。

 

⑥パオジアン@気合の襷
※特性:災いの剣
※性格:意地っ張り
努力値:H0/A252/B4/C0/D0/S252
※技構成:氷柱落とし、聖なる剣、サイコファング、氷の礫
※テラスタイプ:ゴースト

流動的だった最後の一枠。

構築単位で足が遅すぎるので、一体くらいは、という俊足枠。

シーズン前半は連撃ウーラオス@襷やイダイトウ@イバンを使っていたが、ゴリランダーに蹂躙されるのがあまりに腹立たしく、パオジアンにした。

これをもって構築が完成した、という感じではなく、どうかな、と思いながら使っていたし、あまり選出機会がなかった。

悪技を切って、壁とか連撃ウーラオスとか持久力ブリジュラスとかに色々できるように聖なる剣とサイコファング

キノガッサの存在に加えて、極力裏から出すことで、襷とゴーストテラスタルっぽくない雰囲気を出していた。

 

【重い相手】

○霊獣ランドロス

→地面を一貫させているこちらが悪いのだが、コノヨザルの負けん気を上手く合わせないとやりたい放題やられる。

 

アシレーヌ

→耐久に振られるとディンルーが対面できつい。

 

ラティアスwith鋼テラスタル

→ディンルーで対処したいのにテラスタルを切られると打点がない

 

エンテイ

→火傷ずるい。

 

○飛行テラバーストカイリュー

→存在がずるい。

 


【終わりに】

2月27日、レート1950くらいから潜った試合で、78位の相手に負けた。
「やっぱり上の人は上手いね」と、後ろで見ていた妻に私は言った。
しかし、妻はすぐに「でも、これからそういうふうになるんでしょう?」と言った。

 

そのとおりだった。
何が「上の人」だ。
いつまで呑気に憧れているつもりなんだ。
「あの動画の人だ」とか、「あの構築記事の人だ」とか、いつまで素人気分でいるつもりだ。
妻が言ったのは、要するに、大谷翔平がWBCで言った「憧れるのはやめましょう」と同じ意味だった。
彼女はときどき、意図せずに、完璧なタイミングで、完璧に私に必要なことを言う。

 

「これからそういうふうになるんでしょう?」

 

妻が寝室に向かった後も、私は何度もその言葉を反芻しながら、潜り続けた。

私は駄目な夫であるので、こんな場所でしか、妻に上手に礼が言えない。

 

最後まで読んでくれたなら、ありがとうございました。