【SVシングル S15 最終464位 レート2006】満ちる器

【SVシングル S15 最終464位 最終レート2006】

 

「満ちる器」

 

TN:husky


【1.はじめに】

今回を除けば、私がレート2000を達成したのは過去に一度だけで、一年近く前に遡る。
SVからランクバトルを始めて、シーズン1の最終日のバンビーさんといろはさんの動画に感動して、もっと上手くなりたい、とガキみたいに思って、生まれて初めて構築記事というものを読み漁って、いつかこんなのが書ける順位をとりたい、と夢見て、ひたすら上達を志していた、あの頃。
その小さな夢は、シーズン4で叶った。
たぶん、私が持っている本来の力からすれば、早すぎたのだろう。


結局、運がよかったのだ。
運勝ち、という意味ではない。
一年前の無知な私が、たまたま環境にそれなりに適した構築を作れた、という運である。
要するに、シーズン4のお前の結果はフロックだ、ということだ。


私は強くなっている。必ずまたレート2000がとれる。そう思いたかった。
けれどその度に、調子に乗っていた過去の私が「でも俺は1ロムでレート2050超えたけど?」と嘲笑ってきた。さすが私というだけあって、実に感じの悪い奴だった。


2/27の深夜の時点で、メインが1990、サブが1977だったが、サブから潜って、いっきに1860まで溶かした。
サブのレートを戻すという薄い希望にすがるより、メインの一戦に賭けた方が可能性が高いと判断して、2/29の午前10時、レート1990から潜った。
これさえ勝てれば、という試合だったが、初手ブリジュラスが相手のガチグマにミラーコートをケアされて欠伸を撃たれ、耐久型キラーのディンルーの地割れはカイリューにすかされ、コノヨザルのドレインパンチをガチグマの毒テラスタルで切り替えされ、やりたい放題やられて、こちらは残りブリジュラス一体(先発から引っ込んでHPは満タン)、相手はほぼ無傷の持久力ブリジュラスと、裏にはマルチスケイルの残ったカイリューが控えていた。
降参がよぎった。
が、妻が後ろで見ていた。
私が何かを諦めそうになる度に、「ミスト」という映画のラストを引き合いに出して、最後まで何があるかわからないから諦めちゃ駄目なん、と諭す妻だった。
私は苦笑しながら、細い細い、唯一の勝ち筋を追った。
それは、私のブリジュラスが相手のブリジュラスに対して竜星群を撃たずに、かつ、頑丈を残して突破すること、すなわち、悪の波動で2回続けてひるませることだった。
その確率、4%。
無心で一発目を撃った。

「ブリジュラスは ひるんで 技がだせない!」

そのとき、どういうシステムなのか全く理解できないのだが、頭の中で「ジョジョ」風のエフェクトが発動した。

ゴゴゴゴゴゴ……

「次の一撃でブリジュラスが怯む確率はッ!もはや決して4%ではないッ!たとえ100万回悪の波動を撃っていたとしても!今ッ!!この瞬間の一撃で怯む確率はッ!……20%だァアアアア!!」
もちろん、そんなことを声に出して言うと離婚事案になる可能性があるので、現実の私は「怯め」と冷酷に言い放っただけだった。

「ブリジュラスは ひるんで 技がだせない!」

ラスターカノンからの竜星群で相手のカイリューを破って、私は床に倒れ込んだ。

この一年間の、色々な場面がよぎった。
初めて三桁をとったシーズン4の最終戦、HPが1ずつ残った同速の襷セグレイブ同士の礫の撃ち合い。
シーズン4以来ずっと振るわず、もう二度と三桁なんてとれないんじゃないかと怯え続けた時間。
それを救ってくれたシーズン9の襷イダイトウ。お墓参りを撃つ度に、「The Last Respect!」(←お墓参りの英名)と叫んだこと。
シーズン5での墜落以来、ずっと避けていたディンルーを強く使えたシーズン12。
私はもう若くない。いつまで潜る気になれるかもわからない。
ただ、今の瞬間には、マジになれるものがあって、嬉しかった。

器が、災いではなく、別の何かで満ちてゆくのを感じた。

こみ上げてくるものがあった。
それをごまかしたくて、「たかがゲームだ」と声に出して私は笑った。
それなのになぜ、涙が溢れるんだと、私はまた、笑った。

 


感動的な結末を読んだ気になって満足しているあなた、構築記事は、ここからです。
ちゃんと読んで下さい。

 


【2.構築の経緯】

ここ数シーズンでADチョッキディンルーを使い続けており、使用感も愛着も抜群だったので、今回もチョッキディンルーを軸に組み始めた。
ADチョッキディンルーの強みは、環境トップのハバタクカミがどんな型で何をしてこようがほぼ対面で負けない、という点にある。しかも、相手視点ではそれが見えない。
しかし、ハバタクカミを出してもらわないことには始まらない。ADチョッキディンルーは、物理三体、みたいな選出をされると腐りがちになる。
そこで、構築に意図的にフェアリーを一貫させて、相手のハバタクカミが出てきやすい状況を作ることを決めた。


ディンルーでハバタクカミを突破した後、カイリューの積みの起点になる展開をある程度回避するべく、その手の切り替えし性能が自慢のものまねハーブコノヨザルを今期も採用した。


安定した初手枠として、頑丈ブリジュラスを採用。
ジャポの実とミラーコートで素晴らしい対面性能を誇るが、シーズン終盤はガチグマが平気で欠伸を撃ってくるなど、結構読まれていた。


シーズン序盤、ドヒド&ディンルーにかなりやられたのと、グライオンが面倒だったので、見えにくい崩し枠としていかさまダイスキノガッサを採用。


続いて、何か強いらしいという噂のタケルライコを採用。


以上の五体はシーズンを通じてほぼ不動であり、ブリジュラス・ディンルー・コノヨザルの三体選出が半分以上の試合を占めた。


最後の一枠は、イダイトウ@イバン、連撃ウーラオス@襷、ハバタクカミ@眼鏡か襷、など流動的だったが、最終的にはパオジアン@襷に落ち着いた。


ここまで、何と6体中5体がフェアリー弱点の上、地面まで一貫するという欠陥構築だが、そんな構築でなぜレート2000に到達できたのか、乞うご期待。

 


【3.構築のコンセプト】

○相手の認識をずらして対面で殴り勝つ。
○意図的にフェアリーを一貫させて、相手のハバタクカミを誘って狩る。

 


【4.メンバー紹介】

①ディンルー@突撃チョッキ
※特性:災いの器
※性格:意地っ張り
努力値:H0/A252/B4/C×/D252/S0
※技構成:地震、ヘビーボンバー、テラバースト、地割れ
※テラスタイプ:フェアリー

構築の軸。
「さすがに落ちるだろ」と放たれるムーンフォースやらハイドロポンプやらブラッドムーンやらを余裕で耐え、相手のプランを崩壊させる鹿の化け物。
AD極振り、特殊相手に限定して考える限り、異常な対面性能を誇る。
例えばだが、眼鏡ハバタクカミのフェアリーテラスタルムーンフォースを素で耐えた後で、テラスタルを切ってテツノツツミのフリーズドライを耐える、とか。ヤバすぎる。
特に、環境トップのハバタクカミに対して、眼鏡だろうが襷だろうがブーストエナジーの耐久振りが甘えてこようが、テラスを切らずに対面で負けない点が素晴らしい。相手にハバタクカミを選出してほしくて、構築は意図的にフェアリーを一貫させた。
このディンルーをもって、「フェアリーが一貫する」という本構築の弱点は強みに変わっている。
おそらく相手の想定するどんなディンルーよりも特殊に硬く、どんなディンルーよりも火力に秀でていたのではなかろうか。度を超えた特殊耐久で相手を裏切り、「これだけ硬いってことは火力はそんなにないよな」という目算をさらに裏切る、裏切りの鹿。
選出率は九割を超えていたと思う。
技構成は、汎用性の高い地震、対ハバタクカミ兵器のヘビーボンバー(これがないと耐久振りが甘えてきたときに怪しくなる)、カイリューやウーラオスに不意に抜群をつけるテラバースト、最終兵器の地割れ。

地割れは、月の光ガチグマ、ポリゴン2、持久力ブリジュラスなどを想定して入れたが、そのような相手への地割れは外れまくって、何だかなあ、という感じだった。ポリゴン2いなかったし。代わりに、不利な物理相手などに対して「もう駄目だ」と撃ったのが一発で当たったりしたことももちろんあり、特にカイリューの羽休め読みで一日に三度も地割れを当てたときは、申し訳なさで笑いが止まらなかった。地割れが当たらなければ負けていた、という試合よりも、地割れ以外の技があれば、という試合は圧倒的に少なかったので、上振れを生む手段として、採用してよかったと思っている。
強いて言えば、欲しかった技はしっぺ返しで、これがないと、本来カモであるはずのラティ兄弟が鋼テラスタルを切ってきたときに打点がない、という事態になるのが実に気に入らなかった。
ラスタルを切る場面は、「ここで切ればほぼ二体もっていける」と判断したときや、相手のドラゴン技に対しての切り替えし、なめて出てきて剣の舞を積む一撃ウーラオスに対しての切り替えしが多かった。

 

キノガッサ@いかさまダイス
※特性:テクニシャン
※性格:意地っ張り
努力値:H4/A252/B252/C×/D0/S0
※技構成:種マシンガン、マッハパンチ、地ならし、剣の舞
※テラスタイプ:炎

崩し枠にして、選出誘導枠。
選出のときは常に、「相手が誰でガッサを見てくるか」ということをスタートに考えるようにしていた。選出の道筋を開いてくれたことが、最大の貢献かもしれない。
基本的には受け構築を破壊する役割を担っていたが、結構な対面性能を誇るため、通りそうな相手には積極的に投げていた。私はいかさまダイスキノガッサが大好きで、だいたいの構築に投げたくなる癖があるので、その点は常に自戒していた。
いかさまダイスキノガッサは、「キノガッサ対策が実は対策になっていない」というのが本当に強く、
後投げで出てきた水オーガポンが種マシンガンとマッハパンチで何も出来ずに落ちたり、初手で守ってくる全てのグライオンに対して剣の舞を積んでハイパーキノコに化けたり、崩し枠以上の活躍をしてくれた。
技構成は、種マシンガン、マッハパンチ、剣の舞までは確定。
個人的にいかさまダイスキノガッサは、カイリューとサーフゴーのどちらかに対して何も出来なくなるのを受け入れるしかないと思っている。
(剣の舞を切れば話は別だが、それだと、崩し枠としては物足りなくなる。)

今回はサーフゴーへの打点で地ならしを採用したが、カイリューに対して無力なのはやはりきつかった。

努力値をBに振ったのは、とにかく先制技を撃たれるのと、炎オーガポンを出されるので、炎テラスタルを切った後、相手の蔦棍棒と炎テラスタル棍棒を受けても生き残るようにしたため。

 

③コノヨザル@ものまねハーブ
※特性:負けん気
※性格:腕白
努力値:H228/A4/B236/C×/D4/S36
※技構成:ドレインパンチ、憤怒の拳、岩石封じ、挑発
※テラスタイプ:水

3シーズンくらい使い続けている自慢のコノヨザル。

ほぼHBに振っており、パオジアン@鉢巻with悪テラスタルの噛み砕くを耐える、連撃ウーラオス@鉢巻の水流連打を耐える、一撃ウーラオスの剣の舞→暗黒強打を耐える。

特に裏から出ていくコノヨザルはナメられて積まれるのが、物理の積みアタッカーへの渾身のアンサーとしてのコノヨザルがこれである。

切り返し性能が素晴らしく、例えば、ディンルーがハバタクカミを倒して2対1の数的有利をとった後、ラストにカイリューが出てくる、という光景を今シーズンだけで二百回くらいは見たが、そのような局面で、コノヨザル引きがかなり安定する。
カイリューが竜の舞ならばコノヨザルがものまねハーブからの岩石封じで勝負になるし、逆鱗を撃たれたらコノヨザルは倒されてもディンルーのフェアリーテラスタルで封殺できる。

Sは気休め程度に、Sに20振った霊獣ランドロスを抜けるようにしてある。岩石封じを撃った後に抜ける相手を増やすにはもっと振りたいのだが、耐久も削れないので、難しい。

剣の舞を積んだ後のウーラオスの水流連打を耐え、テラスタイプは水。


④タケルライコ
※特性:古代活性
※性格:控えめ
努力値:H148/A×/B140/C220/D0/S0
※技構成:放電、迅雷、竜の波動、瞑想
※テラスタイプ:フェアリー

よくわからないまま、シグマさんが弱点保険で紹介していた型を使い始めて、努力値配分はそのままで食べ残しに変える、という雑な使い方をしていたのだが、強かった。
特に、連撃ウーラオスに対する圧が素晴らしい。

迅雷択と食べ残しの相性のよさは言うまでもなく、さすが元の努力値配分が弱点保険型というだけあって、大体一発は耐える点もありがたかった。

放電は、鈍足揃いで下振れを引きやすいこの構築における数少ない上振れ要素であり、命中安定である程度の威力を確保しつつ、サーフゴーにすら三割のリスクをつけられるのが優秀すぎる。

選出のタイミングがイマイチつかめず、機会自体は少なかったものの、出た試合ではきちんと活躍してくれた。

 

⑤ブリジュラス@ジャポの実
※特性:頑丈
※性格:控えめ
努力値:H0/A×/B4/C252/D0/S252
※技構成:ラスターカノン、竜星群、ミラーコート、悪の波動
※テラスタイプ:ドラゴン

初手での対応範囲の広さが素晴らしいポケモン

最も多く初手で投げた。

そして、相手に応じた動きをシステマチックに決めていた。

ジャポ込みで倒れそうな物理には竜星群、パオジアン・キラフロルにはラスターカノン、赫ガチグマ・アシレーヌ・眼鏡っぽいハバタクカミやテツノツツミにはミラーコート、サーフゴーには悪の波動、ブーストエナジーのハバタクカミとイーユイ(どうせ悪の波動)はディンルー引き。

困ったのは、初手のウーラオスがトンボからハバタクカミに引く、という洒落た動きで、これには結構やられた。インファイトから入ってくるウーラオスも普通にいて、明確な解答を最後まで用意できなかった。

また、最終戦然り、終盤にはガチグマが平気で欠伸を撃ってきて、ミラーコートはかなり読まれていたように思う。

明確に初手で投げなかったのは、グライオン、ディンルー入りの構築。両者に対しては火力が足りず、キノガッサで刺しにいっていた。

技構成は、最高打点の竜星群、無難な一致打点のラスターカノン、特殊高火力で仕留めにくる相手にミラーコート、最後の一枠は、ステルスロックドラゴンテールも使ってみたが、こちらにキノガッサがいる都合上、初手でぶつかる可能性のあるサーフゴーへの打点として、悪の波動。これが思わぬ形で最終戦の奇跡を生んだ。

テラスタイプは、どうせ切らないだろ、という中で何でもよかったのだが、一応、竜星群の火力をあげられるドラゴン。シーズン中、一度しか切らなかったが、その一度は、たぶんこれのおかげで勝てた。

命中不安技が嫌いで、竜星群を撃つ機会が多すぎるのはどうにも気になったが、しょうがない。

 

⑥パオジアン@気合の襷
※特性:災いの剣
※性格:意地っ張り
努力値:H0/A252/B4/C0/D0/S252
※技構成:氷柱落とし、聖なる剣、サイコファング、氷の礫
※テラスタイプ:ゴースト

流動的だった最後の一枠。

構築単位で足が遅すぎるので、一体くらいは、という俊足枠。

シーズン前半は連撃ウーラオス@襷やイダイトウ@イバンを使っていたが、ゴリランダーに蹂躙されるのがあまりに腹立たしく、パオジアンにした。

これをもって構築が完成した、という感じではなく、どうかな、と思いながら使っていたし、あまり選出機会がなかった。

悪技を切って、壁とか連撃ウーラオスとか持久力ブリジュラスとかに色々できるように聖なる剣とサイコファング

キノガッサの存在に加えて、極力裏から出すことで、襷とゴーストテラスタルっぽくない雰囲気を出していた。

 

【重い相手】

○霊獣ランドロス

→地面を一貫させているこちらが悪いのだが、コノヨザルの負けん気を上手く合わせないとやりたい放題やられる。

 

アシレーヌ

→耐久に振られるとディンルーが対面できつい。

 

ラティアスwith鋼テラスタル

→ディンルーで対処したいのにテラスタルを切られると打点がない

 

エンテイ

→火傷ずるい。

 

○飛行テラバーストカイリュー

→存在がずるい。

 


【終わりに】

2月27日、レート1950くらいから潜った試合で、78位の相手に負けた。
「やっぱり上の人は上手いね」と、後ろで見ていた妻に私は言った。
しかし、妻はすぐに「でも、これからそういうふうになるんでしょう?」と言った。

 

そのとおりだった。
何が「上の人」だ。
いつまで呑気に憧れているつもりなんだ。
「あの動画の人だ」とか、「あの構築記事の人だ」とか、いつまで素人気分でいるつもりだ。
妻が言ったのは、要するに、大谷翔平がWBCで言った「憧れるのはやめましょう」と同じ意味だった。
彼女はときどき、意図せずに、完璧なタイミングで、完璧に私に必要なことを言う。

 

「これからそういうふうになるんでしょう?」

 

妻が寝室に向かった後も、私は何度もその言葉を反芻しながら、潜り続けた。

私は駄目な夫であるので、こんな場所でしか、妻に上手に礼が言えない。

 

最後まで読んでくれたなら、ありがとうございました。

【SVシングル S12 最終422位 レート1986】鹿の場所

【SVシングル S12 最終422位 最終レート1986】

「鹿の場所」

TN:roka

 

【1.はじめに】

ディンルーを入れた構築で三桁に乗ったのは初めてだが、実は私が瞬間最高順位を記録したときに使っていた構築の軸は、フェアリーテラスタルABチョッキディンルーだった。

21位。今でもよく覚えている。

SVでランクバトルを始めて、シーズン4でレート2000に乗り、シーズン5の半ばで記録した順位が21位だった。

「二桁いける」と壮大な勘違いをしたシーズン5は最終五桁に終わり、そこから長い低迷が始まった。

私は「もう二度と三桁なんてとれないんじゃないか」という恐怖とともに日々を過ごし、その呪いはシーズン9まで解けなかった。

ディンルーが強い、ということは、頭ではわかっていた。そもそも四災の中で真っ先に好きになって、レギュレーションCで即構築の軸にしたポケモンだった。

しかし、シーズン5の後半、自慢のディンルーで全く勝てなくなり、目標も意志も失って惰性で潜っていた最悪の数日間を思い出すのが嫌で、私は半ば意識的にディンルーを避けてきた。

 

舞城王太郎の「熊の場所」という小説がある。

雑に要点を書くと、熊を恐れて逃げ出したなら、人は出来るだけ早くその「熊の場所」に戻らなければならない、そうでなければ、熊に対する恐怖を拭い去れずに生き続けることになる、という話だ。

 

私にとってそれは、熊ではなく、鹿の化け物だった。

半年の期間を経て、私は「鹿の場所」に戻ったのだ。

遅きに失したかもしれないが、ディンルーを強く使って過去二番目によい成績を残せたことは、とても嬉しく思う。

 

 

【2.構築のコンセプト】

○相手の想定を超える耐久で耐えて殴る、の対面構築。

○対面構築のネックである相手の積みに対して明確な処理ルートを用意する。

○電磁波ハバタクカミを完璧に封殺する。

 

 

【3.構築の経緯】

チョッキディンルーをどう強く使うか、ということがスタートにあった。現環境では物理も特殊も超絶高火力のアタッカーが多く、ディンルーをアタッカーとして運用する場合、物理と特殊の両方を見ようとするのは無理があると判断して、ADに極振りすることを決めた。

ディンルーが特殊相手には圧倒的に強い反面、物理を相手するのはきついので、手に馴染んだHBベースのコノヨザルをディンルーとセットで採用した。が、相手の積みに対して弱すぎるので、ものまねハーブを使ってみたところ、これが上手くはまって、ディンルー・コノヨザルの二体が構築の軸になった。

この二体だと、初手でコノヨザルが相手の物理にギリギリ勝って次の特殊に敗れ、その特殊にディンルーが勝って、となった後に、トドロクツキやカイリューが出てきて積まれて終わる、という展開が多すぎたので、相手のラストのトドロクツキやカイリューをごまかせる枠として、HB赫ガチグマ@オボンを採用。

六割くらいの試合を実質この三体で戦っていた。

残り三体は正直、シーズンの半ばくらいから「とりあえず」という感じで使っていたのだが、なぜか順調に勝ててしまい、変えるに変えられなかった。

通せる相手は限定的だが、はまれば負けない相棒のイダイトウ@襷、

構築全体で足が遅すぎるので一体くらいは速いスイープ役を、ということでイーユイ@スカーフ、

浮いているポケモンが一体くらいは、ということでカイリュー@弱点保険。

 

構築全体にフェアリーが一貫するが、ディンルーが特殊に強すぎるためにそこまで気にならず、むしろ本来的なカモであるハバタクカミを呼びまくる結果になり、してやったりの展開が多かった。

これまた構築全体にドラゴンが一貫するが、こちらは三体のフェアリーテラスタルを用意することで切り返しを可能にした。事実、逆鱗やらスケイルショットやらを撃たれまくったが、こちらが常にその可能性を考慮して選出する限り、十分対応できた。

ただ、構築自体はそれ以外にも色々と弱点が多すぎて(後述する)、よくこんなに勝てたな、というのが正直なところである。

弱みも多いが相手から見えない強みも多い、という構築だったのかな、と思う。結果的に、だが。そして何となく、そういう構築が自分には合っているのかな、という気もしている。

 

 

【4.メンバー紹介】

①ディンルー@突撃チョッキ

※特性:災いの器

※性格:意地っ張り

努力値:H0/A252/B4/C×/D252/S0

※技構成:カタストロフィ、地震、ヘビーボンバー、テラバースト

※テラスタイプ:フェアリー

構築の軸。

前シーズンから、ハバタクカミ、テツノツツミ、イーユイ、そして赫ガチグマ、という環境トップの特殊アタッカーに強い、出来れば対面性能の高いポケモン、ということを考えていた。

滅茶苦茶に特殊耐久が高くて、それも、出来れば相手が想定する以上に硬くて、しかも火力が出て、電磁波にも強い。

そんな奴いねーよ。と思っていたら、いた。

それがこのディンルーである。

あまりの硬さに、私は畏怖の念すら覚えながら使っていた。

ディンルーというポケモンは、数値は異常だが弱点が多すぎてテラスタル前提の運用になりがち、というのは物理を見ようとした場合の話だ。このディンルーは物理との撃ち合いには強くないが、構築単位で見たときに、コノヨザルと赫ガチグマが物理に厚いので、ディンルーには「あなたはとにかく特殊を葬ればいいのよ」と言い聞かせていた。結果、テラスタルを切らずに眼鏡ハバタクカミのフェアリーテラス・ムーンフォースを耐えてヘビーボンバーで確殺する、という化け物が生まれた。

まあ、物理には強くないとか言いつつ、カイリューやウーラオスにフェアリーテラバーストで大ダメージを与えて、ちょくちょく勝っていた。

特に、イダイトウが構築にいる都合上、一撃ウーラオスを結構呼ぶが、フェアリーテラスを切るとアイアンヘッド持ちでもない限り相手に有効打がない。

技は、無難に火力の出る地震、ハバタクカミを葬るヘビーボンバー、汎用性の高いフェアリーテラバーストは確定で、カタストロフィの枠は、地割れにしたい誘惑とずっと戦っていた。特に、地割れがないと月の光持ちの赫ガチグマに対して勝てないのは悔しかったが、「相手がまず間違いなく引く」という場合のカタストロフィの汎用性が高すぎて、変えられなかった。

環境のディンルーはBに厚く振った個体が多く、ここまで極端に特殊耐久と火力に振ったディンルーは想定されにくかったはずで、大暴れした。期せずして物理との撃ち合いになって消耗したディンルーに、「さすがに落ちるだろ」と例えばハバタクカミが出てきても、テラスタルを切ると、C特化ハバタクカミ@眼鏡のムーンフォースが三割程度しか入らない。ヤバい。

その度に私は「ディンルー様~」と新興宗教の信者のように地面にひれ伏して唱えていた。

今シーズンはコノヨザルを初手で投げることが圧倒的に多く、相手の初手がハバタクカミであった場合、特化眼鏡でもない限り後投げで何とかなるのが本当に助かった。

ステロ撒きにも見えるので、それを嫌った相手がハバタクカミで挑発を撃ってくることも珍しくなく、その場で試合をほぼ終わらせていた。

シーズン5での体験(後述)以来、ずっとまともに使えていなかったディンルーを強く使えて、とても嬉しかった。

 

②コノヨザル@ものまねハーブ

※特性:精神力

※性格:腕白

努力値:H228/A4/B236/C×/D4/S36

※技構成:憤怒の拳、ドレインパンチ、ビルドアップ、挑発

※テラスタイプ:水

「あらゆる型のパオジアンとあらゆる型のウーラオスを何とかしろ」という任務を負った猿の亡霊。

私の構築において、毎回コノヨザルは過酷な命を受ける傾向にある。

ほぼHBに振っており、パオジアン@鉢巻with悪テラスタルの噛み砕くを耐える、連撃ウーラオス@鉢巻の水流連打を耐える、一撃ウーラオスの剣の舞→暗黒強打を耐える、まではいいのだが、シーズン1からずっとコノヨザルを使い続けてきて痛感していたのは、硬くて遅い型のコノヨザルの宿命として、とにかく積まれる。特に、初手でウーラオスと対面した場合、襷やパンチグローブ持ちが嬉々として剣の舞を積んでくると、ほとんど試合が終わってしまう。とにかくコノヨザルは「憤怒の拳の火力が上がらないうちに大ダメージを与えたらええんやろ」とナメられる。

というわけで、物理の積みアタッカーへの渾身のアンサーとしてのコノヨザルがこれである。

剣の舞を積んだ後のウーラオスの水流連打を余裕で耐えられるように、テラスタイプは水。

Sは無振りでもよかったが、気休め程度に、Sに20振った霊獣ランドロスを抜けるようにしてある。

「オボンか食べ残しだったら」という場面も多々あったが、それ以上にものまねによる切り替えし性能と、相手の意表をつけるアドバンテージが大きすぎた。

ハバタクカミが特化眼鏡でない限りディンルーの後出しが可能なこともあり、最も多く初手に投げていた。

初手の炎オーガポンに対してはあまり安定せず、岩石封じも考えたが、遅いカイリュードヒドイデ、キョジオーン、カバルドン、ディンルー、遅いランドロス、と挑発を撃ちたい相手はかなり多く、ビルドアップは決まると無双できてしまう中毒性があり、外せる技がなかった。

今回の構築で最も独自性の強いポケモンだと思うし、自慢のコノヨザルである。

舞ったカイリューの能力をコピーして、スケイルショット5発を耐えた後、憤怒の拳でマルチスケイルを貫通して一撃で葬ったときは感動した。

最悪なのは、テツノドクガが(この対面がもう駄目だけど)炎の舞を撃って特攻が上がったときだが、まあ、それは御愛嬌。

 

③イダイトウ@気合の襷

※特性:適応力

※性格:意地っ張り

努力値:H0/A252/B4/C×/D0/S252

※技構成:滝登り、アクアジェット、お墓参り、テラバースト

※テラスタイプ:格闘

相棒枠。

長きに渡って低迷していた私がシーズン9、10と三桁に滑り込めたのはイダイトウのおかげであり、シーズン11で三桁から落ちたのはイダイトウを外した祟りだと思ったので、復活してもらった。

ある程度の自信を持って「イダイトウを通せる」と判断できた相手以外にはほとんど出さなかった。イダイトウが好きだし、間違いなく強いし、もっと出したかったが、私の力不足ゆえ、通せる試合は限定的だった。選出したときの勝率は高かったけれども。

この「イダイトウを通せる条件」というのが難しいけれど、基本的には、

①「襷が残せそうか」ということ、それ以上に、

②「相手が何でイダイトウを処理してきそうか」ということを中心に考えていた。

①がアウトっぽい場合も、「相手がイダイトウを安定して処理できそうな手段が悪タイプ以外になさそう」かつ「おそらくイダイトウにテラスタルを残す展開に出来る」という場合には、積極的に選出していた。

体感として、イダイトウの処理ルートで多かったのは一撃ウーラオス、トドロクツキ、パオジアンだった。これらのポケモンの共通点は、いずれもテラスタルを切らずにイダイトウを処理できることである(不意討ちは、相手視点では択になるが)。それだけに、イダイトウ対面でまずテラスタルを切ってこない。切ったらせっかく半減のお墓参りが半減でなくなる。

そこにぶっ刺さるのが格闘テラバーストである。副産物として、ノーマルテラスタルを切った赫ガチグマや、鋼テラスタルを切ったカイリューに抜群をとれることがあった。

「イダイトウ対策を乗り越えるイダイトウ」をシーズン中ずっと考えていて、正直、そこまでのイダイトウにはしてあげられなかった。そもそもイダイトウにテラスタルを切る時点で、イダイトウの強みを、そしてイダイトウ入りの構築の強みをひとつ失っている。

ただ、この格闘テラバーストがあることによって、イダイトウを2体目に出したい、というときの動きの幅が広がったことはあった。何度かあったシーンとして、「初手コノヨザルが炎オーガポンを追い込むが、炎テラスタルを切られて強引に突破される」→「イダイトウがアクアジェットで炎オーガポンを処理する」→「一撃ウーラオスやトドロクツキが出てくる」という展開で、普通だとここで数的不利をとることを避けられないが、格闘テラバーストイダイトウなら対面で突破して数的有利をとれる。

イダイトウ自身の活躍の機会は多くはなかったものの、無視できない存在感があるため、相手の選出を考えやすかったのと、最終日までの三日間、ここぞという場面で何度か格闘テラバーストがハマって大事な勝ちを拾い、イダイトウを信じて使ってきてよかったと思った。

どうでもいいけど、格闘テラバーストのエフェクトがスタープラチナの「オラオラ」っぽくて、私は好きである。

 

④ガチグマ@オボンの実

※特性:心眼

※性格:控えめ

努力値:H252/A×/B252/C4/D0/S0

※技構成:ブラッドムーン、大地の力、ムーンフォース、欠伸

※テラスタイプ:フェアリー

ガチグマがヤバいヤバいと方々から聞くので、そんなにヤバいのかと使ってみたらマジでヤバかった。

チョッキも当然強いのだろうが、構築の軸がチョッキディンルーだったので、試しにHB@オボンで採用したところ、大活躍した。

主として、トドロクツキやカイリューが積んでくるのを欠伸で流す役割を担ってもらった。これで何試合拾ったかわからない。特に軸であるディンルーが積みの起点にされやすい(トドロクツキがまずテラスタルを切らないという場面ならフェアリーテラバーストという手もあるが)ので、それを回避できる明確な道があるのは大きかった。ただ、欠伸でトドロクツキを流す動きが有名になりすぎたせいか、身代わり持ちのトドロクツキともちょくちょくあたるようになり、身代わりがあったら負け覚悟で欠伸をするしかない場面なのか、身代わりもケアした中間択でいくのか、ということは考慮しないといけなくなった。

技構成は迷ったが、欠伸が確定として、火力がない(まあ、ないとは言っても相当あるんだけど)ので、相手を一撃で真空波圏内に追い込めることが少なく、まず真空波を切った。ただし、特にこちらが欠伸を見せていないときは、相手視点では真空波を無視できないので、相手が真空波がある前提で動いてくれて助かった、という場面は多々あった。身代わり対策のハイパーボイスも、粘れる月の光も魅力的だったが、火力も先制技もない以上、技範囲くらい広くとらないと厳しくないか、と思ってタイプの異なる3ウェポンを採用したが、使用感はよかった。

物理には滅法強い反面、このガチグマはミラーでは勝てない、というか特殊相手にはほぼ勝てないので、そこはディンルー様に何とかしてもらっていた。

 

⑤イーユイ@拘りスカーフ

※特性:災いの珠

※性格:控えめ

努力値:H0/A×/B4/C252/D0/S252

※技構成:悪の波動、噴煙、オーバーヒート、テラバースト

※テラスタイプ:フェアリー

もう5シーズンくらい連続で使い続けている、妻が貸してくれたA0イーユイ。

高速、高火力、安定した命中、追加効果、とわかりやすい強さで、扱いやすいのがありがたい。

構築が「耐えて殴り返す」の方向性であり、総じて足が遅い中で、数少ない「上から叩ける」ポケモンである。

たぶん環境には眼鏡イーユイの方が増えていて、素のテラバーストを連打しておけば基本的に対面で負けない可能性が高いのも助かった。

イーユイを除くと、実は構築単位でサーフゴーが重め(コノヨザルはテラスタルを切らない限りだいたいのサーフゴーに勝てず、ディンルーはトリックされ、ガチグマはゴールドラッシュでワンパンされ、カイリューは有効打が皆無)なので、サーフゴーに対する選出抑止の役割も果たしてもらっていたはずなのだが、サーフゴーはガンガン出てきて、コノヨザル・ディンルー・ガチグマという基本選出は相当負けた。

 

カイリュー@弱点保険

※特性:マルチスケイル

※性格:勇敢

努力値:H244/A204/B60/C0/D0/S0

※技構成:竜星群、神速、アイアンヘッド、けたぐり

※テラスタイプ:鋼

シーズン11のもんぶりゃんさんの構築記事からそのまま拝借させていただきました。ありがとうございました。

いつもカイリューを上手に扱えない私だが、このカイリューは扱いやすく、結構はまる試合が多かった。特に、けたぐりでガチグマを追い込めるのが非常に大きい。

初手で出して一体持っていった後で次に神速を撃ち込む、という動きが出来れば理想的なのだろうが、シーズン11で上位構築に弱点保険カイリューがいたこともあって、特に初手に投げた場合は相当ケアされてしまうので、選出する際には出来るだけ二番手以降に出すことを心がけていた。

 

 

【5.重い相手】

○キラフロル

レート2000に届かなかった一番の要因は、キラフロルに対する明確な処理ルートを作れなかったことだと思う。

私が使いたいくらい大好きな見た目なのだがもう、うざ過ぎる。

特殊に脆いこちらのガチグマではまず勝てないし、イーユイでテラスを切ってもチョッキだったら対面負けるし、カイリューがパワージェムで弱点保険を発動することを期待して出したらケアされてキラースピンを撃たれた挙句にパワージェムで倒されるしで、もう散々だった。

 

キノガッサ

コノヨザルがやる気のありそうな顔をしてごまかすしか対策がなかった。ヤバすぎる。出会わないことだけを祈り続けていたが、かなり出会ってしまった上に、七割くらいのキノガッサがコノヨザルに対して容赦なく胞子を振りまいてきて、大体負けていた。

 

アローラキュウコン

明確な処理ルートがなく、ディンルーでヘビーボンバーを撃ってからカタストロフィで遅延して壁ターンを枯らしにかかったり、イーユイで圧をかけるくらいしか方法がなかったが、なぜかあまり負けなかった。なぜだ。

 

○水オーガポン

強すぎる。何だこれ。

 

カイリューwith飛行テラバースト

やめてくれ。

 


【6.終わりに】

11月27日時点のレートが、メインもサブも1920くらいだった。

私が2ロムを動かすようになったのはシーズン6からだが、片方のロムは基本的に死んでおり、最終日付近まで両ロムともこんなにレートがあるのは初めての経験だった。

三桁は確定した状態にしたかったので、片方はいつ撤退してもいいようにと、ピヨピヨ交互にレートを上げていったら、11月28日にメインが1968、サブが1986、という具合になった。

これはさすがに2000いかないといけない、こんなチャンスもうないかもしれない、と思って29日にメインで潜ったら、1900まで落ち、最終日にサブから動かす勇気はなく、メイン一本で深夜から潜ったが、結局力尽きた。

最終日までは、「こんなチャンスもう……」と思っていたものの、12月1日の気分は実に爽やかで、未熟ながら自身のプレイングの上達と、ポケモン対戦の楽しさをあらためて実感できた、いいシーズンだった。

 

SVで十年ぶりくらいにポケモンに復帰し、ランクバトルを始めて約一年が経った。

フェアリータイプの存在すら知らなかった私がここまでこられたのは、ひとえにポケモンというゲームの限りない魅力と、多くの方々のお陰である。

ランクバトルに本気になれるきっかけをくれた配信者の皆さんに、

勉強になる構築記事を書いてくれた皆さんに、

対戦してくれた皆さんに、

月末の休みにデートにも行かずに潜り続けている夫を応援してくれた妻に、

この場を借りて感謝を捧げる。

 

最後まで読んでくれたなら、ありがとうございました。

【SVシングル S10 最終889位 レート1910】イダイトウ心中

【SVシングル S10 最終889位 最終レート1910】

「イダイトウ心中」

TN:husky

 

【1.構築の経緯】

※この構築の経緯はフィクションです。

私が好きなThe Birthdayというバンドの曲の中に「なぜか今日は殺人なんて起こらない気がする」という歌詞がある。
そんな日だった。
空は、この世に飢餓や戦争やオニゴーリなどあってはならないとでも言いたげに美しく晴れ渡り、シーズン9で「もう二度と三桁なんてとれないんじゃないか」という呪縛から逃れた私は、九月の涼やかな空をそのまま映したような心で、グラススライダーの解禁発表にもめげず、シーズン10もイダイトウと共に戦う決意を固め、今までになく順調に構築を編み上げていた。
Xの不穏な知らせが、それを切り裂くまでは。

「オーガポン ランクバトルで使えて草」

私は階段を下りたポルナレフ並みに何が起こったかわからなかった。
最初に思ったのは「いや、バグだろ」ということだったし、実際、今でもバグだったのではないかと思っている。

その後、公式からわけのわからない発表があった。
その発表の真偽はもう、どうでもよかった。
バグを後から仕様だと言い張るなら不誠実な嘘吐きだし、本当に仕様だというなら公式は狂人の集まりである。
私はポケモンというゲームが好きだし、感謝もしている。
だから、多少の瑕疵には寛容でありたいし、大っぴらに非難もしたくない。
しかし、今回ばかりは怒りに震えた。

DLC解禁の日、私は深夜に帰宅して、襷を肩にかけた(たぶん肩ないけど)うちのイダイトウに語りかけた。
「残り二週間くらい、荒れたシーズンになるんだろうな。混沌の内にシーズンが終わる気がする。そんなのが、公式の望んだことだったのかね。何かもうさ、馬鹿らしくなった。だから…」
今シーズンは捨てようかな、という言葉を、私は飲み込んだ。
沈黙する私の前で、イダイトウは何も答えず、尾びれを振り続けていた。
その尾びれは、激しい流れに逆らって川を上るためにあるのだった。

シーズン9の自分の構築記事で、私は書いていた。
「イダイトウというポケモンは、川を上る旅の途中に志半ばで散った仲間の魂をまとうのだという。報われることなく構築から消えていった数多のポケモンたちと、胸を熱くするたかがゲームに出会えた幸運にときどき思いを馳せながら、私は激しい流れに抗っていきたい」
何かこれ、ちょっと予見的である。

私はイダイトウに微笑みかけ、「人間の世界には」と言った。
「心中、という言葉がある。それは要するに、共に死んでしまおう、という行為を指す。けど、ときどき、野球なんかで言うんだよ。ピンチになって、それでも投手を代えないときに、『この試合はエースと心中ですね』なんて。それは、死ぬことが目的じゃないんだ。後悔せずに生きのびるためにその道を選ぼうとする場合も、人間はときどき、心中、って言葉を使うんだよ。おかしいだろ」

※深夜に決意を固めた私とイダイトウ

こうして、その後何やかんやあって、構築が完成した。

イダイトウ心中である。

 

【2.構築のコンセプト】

前提:対面で殴り勝つ(サイクルを回す技量が私にはない)。

○エースのイダイトウを強く通す。

○相手に軽々にステロを撒かせない。

○イダイトウ以外にテラスタルを使いたい放題使う。

○イダイトウが通せないときのプランBをきちんと用意する。

 

【3.真面目な構築の経緯】

シーズン9同様、イダイトウをエースとして強く通す構築を目指した。
そのために、相手に軽々しくステロを撒かせないことが必要だった。
当初の初手枠として、フェアリーテラスタル込みで広い対応範囲を持ちつつ、「悠長にステロなんか撒いてる場合じゃあないな」という圧力をかけられるイーユイ。
これは、イダイトウと合わせてシーズン9からの続投だった。

次に、パオジアンに有利に対応できる、かつ、連撃ウーラオスに一泡吹かせられる枠として、HBベースのビルドレコノヨザルをイダイトウに代わるプランBのエースとして採用した。

ハバタクカミやテツノツツミに対しては、前シーズンはヒスイヌメルゴンで見ていたが、ヌメルゴンは「安定はするけれど怖さに欠ける」というポケモンである気がして、選出機会を作れなかった。そこで、見た目からして怖いドドゲザン@チョッキを採用した。

この四体に加えて、カイリュー、サーフゴー、ボルトロス、岩オーガポンなどで、最終日付近まで潜っていた。

が、最終日二日前くらいにパッタリ勝てなくなり、特に積みの起点を作られて負けるパターンが多かったので、頼むからそんなに積まないでくれという祈りを込めて、選出誘導のつもりでヘイラッシャを採用した。

最後の化身ランドロスは終盤で二回当たって二回ともボコボコにされ、「あのポケモンなあに?」と思って最終日に入れたが、これがかなり活躍した。

また、あくまで結果的にだが、イーユイ、ドドゲザン、イダイトウ、ランドロスという並びになったことで、相手のサーフゴーが極めて出てきにくい構築になった。
よって、相手にサーフゴーがいるときは「5体の内から3体」を基本に考えていけばよくなり、これがわりと助かった。

 

【4.メンバー紹介】

①イダイトウ@気合の襷
※特性:適応力
※性格:意地っ張り
努力値:H0/A252/B4/C×/D0/S252
※技構成:アクアブレイクアクアジェット、お墓参り、がむしゃら
※テラスタイプ:水

2シーズン続けて構築のエースを張った魚の亡霊。

イダイトウ@襷は、シーズン9でいっきにスターダムにのし上がり、あまりに有名になってしまった。
一言に「襷イダイトウ」といっても、がむしゃらを採用しているのか、高速移動や身代わりを採用しているのかで対処の方法が異なるため、完全に一点読みで対応されるというわけでもない。
ただ、本質的には、「わかっていても止められない」という種類の破壊力と、テラスタルを切らなくても強いという使い勝手のよさが強みかと思う。

前期同様、イダイトウの襷を残すため、構築単位でいかに相手のステロ展開を抑止するか、ということに腐心したが、相手は相手で何とか襷を潰そうとしてくるわけで、そのせめぎ合いが最初から最後まで続いたシーズンだった。

単体で雑に使って強い、というポケモンではなく、構築単位での通し方を作ることと、イダイトウが通せないときのプランBを用意できるか、ということが重要なポケモンである気がした。

テラスタイプは水。シーズン中の数日間、ドラゴンテラスタルからのスケイルショットを試してみたが、あまりうまく使えずにボツになった。

構築の軸でありながら、通せる機会はシーズン終盤にかけて減っていった。ただ、今シーズンつくづく思ったのだが、シーズン一か月という長丁場を安定した精神状態で乗り切るためには、調子のいいときも悪いときも、病めるときも健やかなるときも、「好きなポケモンを信じて使っている」という事実は、とても大切な支えになる。
シーズンの最初から最後まで、イダイトウと戦い続けることが出来て、とても楽しかった。

 

②イーユイ@こだわりスカーフ
※特性:災いの珠
※性格:控えめ
努力値:H0/A×/B4/C252/D0/S252
※技構成:悪の波動、噴煙、オーバーヒート、テラバースト
※テラスタイプ:フェアリー

厳選の概念すらない強運の妻が貸してくれたA0金魚。前シーズンからの続投。

ラスタルを切る前提であればほとんどの相手に対して不利をとらないのと、相手に「ステロ撒いてる場合じゃない」という圧を与えるため、シーズン前半は初手で投げることも多かった。
相手の裏を見つつ一貫する技をぶっ放す、というシンプルな運用で、わかりやすくて大変よろしい。

個人的な今シーズンの成長ポイントとして、相手の持ち物を選出段階でかなり集中して検討するようになったことがある。ランクバトルの諸先輩方からは「お前今までそんなことも考えずに潜ってたのかよ」と笑われるかもしれないが、まあ、程度の問題として。例えば相手の構築にイダイトウがいて、コノヨザルやガブリアスがいるという場合、「どうせイダイトウが襷だろ」と割り切って、初手のコノヨザルやガブリアスにステロを撒く隙を与えずにイーユイのテラバーストで吹き飛ばす、という具合である。

上から高火力を押しつけつつ、火傷や怯みのリスクを与えるのも凶悪で、炎技を受けにきたカイリューが火傷して終わる、というような展開も少なくなかった。
また、準速スカーフで、イーユイミラーでの勝率も悪くなかった。

ネックは、だいたいのハバタクカミに対して撃ち負けてしまうこと。初手で合わせられると結構ヤバい上、構築的に初手でハバタクカミを投げられることが非常に多く、おまけに初手の電磁波ハバタクカミが大流行したせいで、次第に先発をドドゲザンに譲って裏から出てくることが増えていった(それはそれで強かった)。

前シーズン同様、基本的には「全てがイダイトウに収束する」という直線的な構築だったので、構築のコンセプト的に、イダイトウと相性のいいポケモンだったと感じる。

 

③ドドゲザン@突撃チョッキ
※特性:負けん気
※性格:意地っ張り
努力値:H252/A252/B4/C×/D0/S0
※技構成:ドゲザン、不意討ち、アイアンヘッド、テラバースト
※テラスタイプ:フェアリー

今シーズン最多出場、計り知れない貢献をしてくれた極悪非道枠。

ハバタクカミやテツノツツミを暗殺する役目を担い、当初の予定とは違ったが、初手の電磁波ハバタクカミの蔓延とこちらの構築的な問題により、最終的にはほぼ初手で投げていた。

ブーストエナジーのハバタクカミは余裕だし(電磁波を入れられても元が遅いから何もなかったふりをしていた)、C特化メガネのムーンフォースすら余裕で耐える。

撃ち合い性能の高さは言うまでもないが、ハバタクカミを相手するポケモンとして、負けん気の存在が脅威である。ムーンフォースでCが下がることはしょっちゅうあり、それだけで大変なことになる。

テラバーストは、相手のハバタクカミが引いた後に出てくる相手に抜群をとれることが多く、ドドケザンが削れても後のハバタクカミの処理に問題なし、という展開のときは積極的にテラスを切っていた。

初手のドドケザンはステロ撒きにも見えるせいか、相手が悠長に挑発してくることも稀にあり、その度に私は「フハハハハ!」と他では使わない笑い声を上げながらイージーウィンをもらっていた。

 

④コノヨザル@食べ残し
※特性:精神力
※性格:腕白
努力値:H228/A4/B236/C×/D4/S36
※技構成:憤怒の拳、ドレインパンチ、ビルドアップ、挑発
※テラスタイプ:水

「パオジアンを何とかしろ」という任務を負った猿の亡霊。イダイトウが通せないプランBのエースを担う。客観的にはおそらく今シーズンのMVP。

シーズン1からの通算で、私が一番使い込んできたポケモンは多分、コノヨザルである。襷、電気玉、スカーフ、チョッキ、色々なコノヨザルを使ってきたが、今回の型はかつて最高順位をとったシーズン4で使っていたのと全く同じ個体である。もう調整意図は覚えていないが、強い。ハマったらマジで手がつけられない。

速い相手には耐えて殴る、遅い相手には上から積むか挑発、というのが基本的な動きで、常にアンコールに怯えながらの立ち回りになるため、積むか殴るかの選択が肝になるが、コノヨザルに限って言えば、相当な練度に達した自信がある。

環境にうちのコノヨザルより遅い耐久型のカイリューが多かったこともあり、大活躍した。対パオジアンに特化するならば素早さを無視して耐久に振ってもよかったが、遅いカイリューがどこまでセーフかわからず、そのまま使い続けた。

テラスタイプは水。連撃ウーラオスと炎オーガポンのどちらを重く見るかで迷いながら使っていた。初手ドドゲザンが連撃ウーラオスと対面してしまった場合、コノヨザルに引いて水流連打を受けると、半分弱のダメージが入る。その時点で憤怒の拳の威力がえらいことになっているので、相手は十中八九、水テラスタルを切って確実にコノヨザルをしとめにくる。そこに水テラスタルを合わせる、というのが、抜群を切る以外では主な使い途だった。

なお、実は構築単位で茸の胞子が滅茶苦茶ヤバいのだが、コノヨザルがいかにもやる気のありそうな顔をすることで誤魔化していた。

最終日の午前8時45分に始まった最終戦、よりによって苦手の受けループに当たってしまい真っ青になったが、毒びしの毒に冒されながらもドヒドイデクレベース、ラッキーを一人でなぎ倒して三桁に導いてくれたこの怒れる霊長類のことを、私は永く忘れないだろう。

 

ランドロス@命の珠
※特性:力ずく
※性格:臆病
努力値:H0/A×/B4/C252/D0/S252
※技構成:大地の力、ヘドロ爆弾、サイコキネシス、悪だくみ
※テラスタイプ:毒

私にとって謎の化身。最終日のみだが、かなり活躍した。

私は化身ランドロスのことを何も知らなくて、最終日前日に二回対戦して、二回ともボコボコにされ、何だこれ強いじゃねえか、と思って構築に入れたら、普通に強かった。

使用率88位。謎。マジで信じられない。きっと私の知らない弱点があるのだろうが、とにかく強かった、としか言えない。

地面と電気の一貫性を同時に切れる、安定した高火力、命の珠の反動がないという意味不明な仕様、まあまあ速い、まあまあ硬い。このまあまあが駄目なのか?うーん、わからん。

誰か教えてほしい。

 

⑥ヘイラッシャ@ゴツゴツメット
※特性:天然
※性格:腕白
努力値:H252/A0/B252/C×/D4/S0
※技構成:地割れ、欠伸、眠る、寝言
※テラスタイプ:フェアリー

最終日だけ入ってきた祈りの鯰。

私はシーズン2から4でフルアタの突撃チョッキヘイラッシャを使っていたが、真っ当なHBのヘイラッシャをあまり使ったことがなく、最終日にいきなり使いこなせるとも思えなかったので、そもそも選出しないつもりで入れた。対面構築の宿命と言うべきか、積まれて負ける(特にカイリューガブリアス、ウーラオス、トドロクツキ、オーガポン)展開が多かったので、それを少しでも抑止すべく、「頼むからそんなに積まないでくれ」という祈りを込めて御守りとして採用した。実際どれくらい効果があったかは、わからない。

ヘイラッシャ初心者の目線でも「これはさすがにヘイラッシャ出した方がいいのでは」という試合だけ、最終日60戦くらいしたうちの確か5戦だけ出して、4勝1敗だった。もっと出したらよかったのかもしれないが、その自信はなかった。

 

【5.重い相手】

○キノコ関連
→実はこれがマジでヤバいのだが、コノヨザルがやる気ありそうな顔をしてごまかしていた。
オーガポンとゴリランダーが強い環境で、キノガッサなんて絶滅危惧種になるだろ、とタカをくくって、ある程度は切っていた。

○炎オーガポン
→準速なら化身ランドロスで上からヘドロ爆弾、最速ならコノヨザルで何とかならないこともないが、そんなのわかんねえもの。

絶対零度パオジアン
ポケモンというゲーム、これだけ多くのキャラクターがいながら対戦のバランスが破綻していない、というのは本当にすごいと思っている。
だから、このポケモン強すぎとか弱すぎとか、あまり言いたくない。
だが、パオジアンに絶対零度を与えたことだけは、間違いだったのではないかと思う。


【6.終わりに】

それなりに納得のいく結果だったが、公式への不信感にまみれた、嫌なシーズンだった。

SVで初めてランクバトルに参加した私は、幸運なことに、これまで公式への不平不満というのはほとんど感じたことがなかった。
そういう意味で、今までは子どものようにポケモンを楽しんできた。
よく聞く公式への非難の最たるものとしてテラピース集めがあったが、それに対してすら、私は特段の不満はなかった。
面倒臭いけど、トータルとしてこんなに楽しいんだから、まあいいじゃん、と思っていた。
私は、他人の過ちに対して出来るだけ寛容でありたいと思って生きている。
許すとか許さないとかの判断も、他人に対して極力したくない。
自分がろくでもない過ちを犯しながら生きている自覚があるからだ。

だが、今回の件に関しては、過ちの種類が違う。
真剣に対戦に取り組む人間をなめているとしか思えなかったからだ。
私はポケモンが好きだし、マジになれるものをくれた公式には、感謝もしている。
判断を間違えるのはしょうがない。
けれど、ハートは間違っちゃいけない。

精神年齢の低い私は、十代の頃から今に至るまでGreen Dayが好きで、今でもずっと聴いている。
年齢がばれるが、私が大学生の頃、American Idiotというアルバムが出た。
イラク戦争を巡って、多くのメジャーなバンドが沈黙する中、当時のブッシュ政権を露骨に非難する曲が並んでいた。
そのアルバムを引っ提げたライブの中で、ボーカルのビリー・ジョーが叫んでいた。
「This song is not anti America. It's anti war!!」
(これは反米の歌なんかじゃない。反対してんのは、戦争だ!)
それを見たとき、嗚呼、この人はアメリカを愛しているんだな、と思って、胸が熱くなった。

大好きだからこそ許せないことも、あるんだよ。

それを声高に叫ぶのは、最低限の結果を残してからにしたかった。
今シーズン、よかったことは、それだけだ。

最後まで読んでくれたなら、ありがとうございました。

【SVシングル S9 最終856位 レート1920】墓前でBaby, don’t cry

【SVシングル S9 最終856位 最終レート1920】

「墓前でBaby,dont' cry」―― It's just a game

TN:husky

 

 

 

【1.はじめに】

シーズン4で初めて三桁に乗った後、長い低迷が続いた。
まあ、低迷というか、もともとその程度の実力だった、ということだ。
SVからランクバトルを始めて、シーズン4で333位になり、シーズン5の十日目くらいには21位まで上がり、「これはいよいよ二桁か」とはしゃいでいた。
完全に勘違いであり、シーズン5の半ばで、自分には全くそんな力はない、ということを思い知った。
それ自体はただの事実だから、何ら問題ではない。
問題は、自信を失ったことだった。
それはわかっていたが、わかったからと言って自信が戻ってくるわけではない。
そして経験的に、勝負事で自信より大切なものはほとんどない。

シーズン5の終盤は、酷いものだった。
思いつきで日替わりの構築を転がしているだけだから、どの構築も信じられなかった。
勝っても負けても楽しくなかった。
順位は二次曲線的に下がってゆき、最終的に五桁まで落ちた。
いつからか私は、かつて自分がどうやって勝っていたのか、まるでわからなくなっていた。
選出画面を見て、全ての相手に負ける気がした。
特に最後の三日間は惨憺たるもので、何の闘志も向上心もないまま、ただただ、惰性で潜って時間とレートを食い潰していった。

シーズン6の初日、「あんな醜いバトルは二度としない」と心に誓った。
この歳になって、何か新しい分野で人と競うことに夢中になれるなんて、もう一生ないかもしれないと思っていた。
別に、それでいいとも思っていた。
そういう日々を、ポケモンのランクバトルが少し、変えてくれたはずだった。
それを汚すようなマネをしちゃいけない。
私がどんなに汚れた人間であろうと、ポケモンは汚しちゃいけない。

初心に帰って、皆さんの構築記事を読み漁り、動画を見まくった。
私はとにかく闇雲に潜りたくなる人間だが、それをこらえて対戦数を削り、代わりに構築を考える時間を増やした。
半月で二桁から五桁まで落ちるというシーズンを過ごしてしまったからには、もはやシーズン途中でどんな順位をとろうが、永遠に「もう二度と三桁なんてとれないんじゃないか」という思いがつきまとうことはわかっていた。
失われたものを取り戻すには、最終結果を残す以外になかった。
今回、何とか三桁に復帰できて、心から安堵している。

勉強になる動画を投稿してくださった皆さんに、
構築記事を書いてくださった皆さんに、
対戦してくださった皆さんに、
過去作のポケモンがない私とGTSで交換をしてくれた世界中の皆さんに、
そして、テラスタイプと型を変える余裕のない私にイーユイ・パオジアン・ディンルーを貸してくれた妻に、
(ちなみにチオンジェンは妻自身が使っていた)
この場を借りて感謝を捧げる。

 

 

【2.構築のコンセプト】

前提:対面で殴り勝つ(サイクルを回す技量が私にはない)。

○最後はイダイトウ@襷が出ていって何とかする。

○相手に軽々しくステロを撒かせない。

○安定した命中率を確保しつつ、相手に追加効果のリスクを押しつける。

○テラスタルはイダイトウ以外に惜しみなく使う。

 

シーズンを通じて、イダイトウ@襷をいかに強く通すか、ということを考え続けた。

最初から最後まで構築にいたのはイダイトウとボルトロスのみであり、構築が変わる度にパーティ名を「ボゼン(墓前)2」「ボゼン3」というふうに更新していったのだが、最終的に使っていた構築は「ボゼン29」だった。

正直、今回は「構築が完成した」というような充実感はなく、最後まで「何か違うな」という迷いを抱えながら潜り続けた。

そういう中で三桁に復帰できたことは、幸運という他にない。

そんなわけで、「構築の経緯」を語ることにもあまり意味がないと思い、割愛する。

 

 

【3.メンバー紹介】

①イダイトウ@気合の襷
※特性:適応力
※性格:意地っ張り
努力値:H0/A252/B4/C×/D0/S252
※技構成:アクアブレイクアクアジェット、お墓参り、がむしゃら
※テラスタイプ:水

シーズンを通じて使い続けた、構築のエース。
雨やトリックルームに依存することなく、こだわることもなく、イダイトウをいかに強く使うか、という問いに対するアンサーイダイトウ。
「すごい型を思いついてしまった」と浮かれていたが、全く同じイダイトウを使った方が既にシーズン8で結果を出されていたことを知り、調子に乗ってごめんなさい、と思った。

襷が削れると仕事が出来ないほどではないが、襷が残っているときの性能があまりに強烈すぎる。
普通に殴っても強いけれど、がむしゃらを持つゴーストタイプであるおかげで、普通の襷持ちでは不可能な「もう駄目だ」という状況もひっくり返せるパワーを持つ。
極端な話、3回舞われた挙げ句にマルスケまで残っている、というカイリューと対面しても、がむしゃら&アクアジェットで勝てる(ゴツメやめて)。
そういう場面はシーズン中に何度もあり、その都度私は「もう駄目だと思うことはー今まで何度でもあったー」とブルーハーツを歌いながら、舞ったカイリューを葬っていった。
この「がむしゃら+アクアジェット」は危機回避能力が素晴らしく、基本的にはラストに出ていくポジションでありながら、瞑想ハバタクカミになどに積まれて「やべえ」となったときに二番手で緊急出動することもあった。

選出の段階では、イダイトウが通りそうか、ということを最優先で考えていた。
具体的には、要するに襷が残せれば大体何とかなるので、相手が設置系の技を撒いてきそうかどうか、撒いてくる相手だったとしても、何とか撒かせずに処理できないか、ということを焦点にした。
そのために、相手が「これは悠長にステロなんて撒いてる場合じゃあないな」という圧をかけること、遅くて火力のないステロ撒き(カバルドンやドオー)にはボルトロスで挑発を撃って封殺することを徹底した。

ただし、ステロを防げずに撒かれてしまった場合でも、生来の耐久力と意外な速さゆえ、何とかなってしまう場合は少なくなかった。
なお、水もゴーストも半減するような相手(主には妖怪チオンジェン)がいるときも、基本的に選出を控えた。

イダイトウは、テラスタルを使わなくても強いのが長所のひとつだと思う(というか適応力の仕様上、テラスタルを切らない方が強い場面も多々ある)。
このポケモンがエースであるおかげで、他のポケモンに積極的にテラスタルを使っていくことが出来た。
誰にテラスタルを切るか、という選択肢の幅が、基本的にイダイトウ以外のどちらか、という二択から考えていけるのも、未熟な私には試合プランが立てやすく、助かった。

使用感としては、まるで違うポケモンだが、私が一度だけ三桁に入れたシーズン4で使っていた、大好きなCS振り切り頑丈眼鏡ジバコイルに似ていた。
行動保証が残っていれば強い、意外と速い、その割に硬い、火力がヤバい。
ジバコと決定的に違うのは、こだわらずにしかも先制技が撃てるという点で、これが本当に強かった。
大好きなジバコをリストラしたことに、私は心のどこかでずっと引っかかりを感じていたので、イダイトウにジバコの亡霊を見た気がして、この魚の幽霊が大好きになった。

8月30日にバンビーさんが襷イダイトウの動画を上げていて、おそらくそれによって一気に有名になってしまい、最終日、それまでより明らかに襷を警戒された相手の動きが増えた。
が、一方で、バンビーさんが紹介したイダイトウはがむしゃらではなく高速移動持ちだったため、それを警戒したパオジアンが不意討ちではなく氷柱を撃ってくれたりして、不意討ちを撃たれたら絶対に勝てないパオジアンに勝てることも何度かあったので、まあ、結果的にプラマイゼロくらいだったと思う。

どうでもいいけど、「お墓参り」の英語名が「last respect」だというのが面白すぎて、お墓参りを撃つ度に、私は「the last respect!」と映画の予告編のナレーションみたいないい発音で叫んでいた。

あと、これもどうでもいいけど、「偉大」な「トウ」って何だよ、と思って検索したら、「偉大」と「イトウ(魚のイトウね)」の複合らしいと知った。
目からウロコである。
魚だけにな!

 

 

ボルトロス(霊獣の姿)@オボンの実
※特性:蓄電
※性格:控えめ
努力値:H156/A×/B4/C116/D4/S228
※技構成:放電、ラスターカノン、草結び、挑発
※テラスタイプ:鋼

見た目が好きなので採用した、シビれる雷神、というかシビれさせる雷神。

努力値配分と持ち物は、シーズン8のスポンジさんの構築記事から勝手に拝借させていただきました。
ありがとうございます。
シーズン8の前半は眼鏡やスカーフで使ってみたが、動かしにくいことこの上なく、ボルトロスはこだわらない方が強いと思って襷やゴツメなど試してみたものの、イマイチ決まらなかった。が、このオボン型は素晴らしい。
スポンジさんの耐久ラインが絶妙に調整されていて、A特化水テラスウーラオスの水流連打をオボン込みでだいたい耐える、C特化眼鏡サーフゴーのシャドーボールを確定で耐える。
その上で、速さは準速ウーラオス抜き。
あと、使っていて本当にありがたかったのは、臆病C特化テツノツツミのフリーズドライを確定で耐えること。
対面でテツノツツミに勝てるポケモンがいることが非常に助かった。

技構成は、基本的に対面で殴り合う構築ということもあり、ボルトチェンジを切って挑発にした。
対象となる大体の相手の上から撃てるこの挑発が非常に有用で、イダイトウを通すためにステロを阻害する、相手の積み展開を抑止する、何かと便利だった。
「浮いている挑発持ち」というのは恐ろしく、カバルドンやドオー(毒づきとかあれば別だけど)に何もさせない。
しかもその対策は相手視点では見えないから、ボルトロスに対してカバルドンやドオーが結構な頻度で出てくる。
この「誘う相手を完封する」という動きが強すぎて、カバルドンやドオー入りの構築にはイージーウィンを連発した。
ボルトロスに対しては、相手がこだわりを想定して動いてくることもちょくちょくあり、電気技に合わせて出てきたディンルー、ガチグマなどに草結びで痛手を負わせて有利をとるなど、とても使い勝手がよかった。

メインウェポンは10万ボルトではなく、放電。
火力不足を感じる場面もないではなかったが、それ以上に三割の麻痺がヤバすぎて、本来対面で勝てない相手に素早さ逆転のおかげで勝ったり、電気技を半減で受けにきた相手が麻痺して機能停止したり、これのおかげで何試合拾ったかわからない。
命中安定である程度威力もあり、サーフゴーにすら三割のリスクを負わせられるなんて素敵すぎる。

 

 

③オオニューラ
※特性:軽業
※性格:意地っ張り
努力値:H252/A132/B100/C×/D20/S4
※技構成:インファイト、フェイタルクロー、シャドークロー、剣の舞
※テラスタイプ:ゴースト



シーズン終盤に入ってきて、構築を大きく変貌させた化け猫。

手足の長さのバランスがポケモンとしておかしい。
私はこの妖怪じみた外見がとても気に入っていて、シーズン8でノーマルジュエルとグラスシードのオオニューラを試したが、あっさり対策の網にかかって諦めていた。
しかし、8月21日、日頃から参考にさせてもらっているしざよさんのシーズン8のオボンオオニューラを参考にしたこの風船オオニューラを入れてから、構築の勝ちパターンがいっきに広がった。
この子が入ってから、イダイトウを通すか、オオニューラを通すか、というのが構築の基本線になった。

オオニューラはフェイタルクローの追加効果で勝とうとすると勝てない、という趣旨のことをしざよさんが言われていたが、その教えを守り、基本的にはフェイタルクローで何も起きなくても強い積みエースとして運用していた。
が、実際には、私のプレイングが未熟であるゆえ、「何か起きろ!」と叫んでフェイタルクローを放つ場面も多々あり、実際、当たり前だが、結構な確率で何かが起きた。

構築として、基本的にはイダイトウを通すのがプランA、オオニューラを通すのがプランBだったが、両方いけるんじゃね?というときはヒスイコンビ(下手したらヌメルゴンとトリオ)で選出することもあった。
イダイトウを通す上で、オオニューラを選出するメリットは、「オオニューラの前で悠長にステロや毒びしなんか撒いてくる相手は少ない」ということだった。
剣の舞だって警戒されるし、そもそもフェイタルクローという技は、試行回数を稼がれたくない技の最右翼だからだ。

だいたい何でも一度は耐える耐久(つまり舞える機会とフェイタルクローの試行回数)を確保しつつ、風船が割れて軽業が発動した後の異常な速度でぶん殴る。
こんなの強いに決まっているのだが、それゆえ、多方面から見えない対策がされており、やれドラゴンテールだの、やれレッドカードだの、やれサイコショックだの、やれサイコファングだの、見えていないけどおそらく隠密マントだの、決してやりたい放題やれたわけでもなかった。
しかし、高速・高火力を兼ね備えながら、常に何かを起こす可能性を秘めた不穏なアタッカーとして、十分すぎるくらい活躍してくれた。

なお、ゴーストテラスタルを切ると、神速と地震しか攻撃技のないカイリューを完封できるため、ときどきカイリューが泣きながら降参してきた。

 

 

④イーユイ@こだわりスカーフ
※特性:災いの珠
※性格:控えめ
努力値:H0/A×/B4/C252/D0/S252
※技構成:悪の波動、噴煙、オーバーヒート、テラバースト
※テラスタイプ:フェアリー

構築を救ってくれたメシア金魚。


ちなみにこのイーユイは妻が貸してくれたイーユイである。
A0個体だが、妻は特に厳選をするでもなく(というか彼女に厳選という概念はない)、一発でこのイーユイを引き当てていた。
妻の運よすぎ。

きっかけはシーズン終盤、数時間の間に一撃ウーラオス入りに五敗した日があって、「上から叩ける見えないフェアリー枠」としてイーユイを採用した。
採用当初からある程度テラスタルを切る前提で考えていて、その背景には、イダイトウが基本的にテラスタルを切らなくても強いエースである、という前提があった。
もうひとつの採用理由は、イダイトウを通す上で、相手に悠長な設置系の技を撃たせないこと。
これは構築単位の最優先事項であり、「イーユイ相手に呑気にステロなんて撒けないだろ」という思惑があったが、これは当たった。
あっという間に当時構築にいたコノヨザルを押しのけて初手枠に居座り、「初手イーユイで一匹持っていって、相手にステロを撒かせず、最後はイダイトウが何とかする」という基本パッケージが完成した。
それまで重かった初手ランドロスは完全にカモと化し、数十体のランドロスがこの金魚の前で灰になっていった。アッシュ・トゥ・アッシュ。

とにかく「こういう相手にはこうする」というプランが立てやすかった。
基本的に初手に投げて、
・対カイリューガブリアス・ウーラオス・(対面したくないけど)ディンルー → フェアリーテラバースト
・対パオジアン → テラスタルを切って、噴煙かテラバかは裏を見つつ
・対テツノツツミ → テラスタルを切って、悪の波動かテラバは裏を見つつ
・対ランドロス → オーバーヒート
・対ハバタクカミ → ヌメルゴンを選出していれば引く・いなければ、悪の波動(相手がブーストエナジーなら水テラスタル警戒)か噴煙(相手がこだわっているっぽいならフェアリーテラス警戒)
というような感じで、わかりやすくて大変よろしい。

基本的に「一直線にイダイトウに向かう」という直線的な構築だったので、構築のコンセプトという視点で見たときに、イダイトウと非常に相性のいいポケモンだったと感じる。

 

今シーズンの最終日、午前七時半くらいの最終戦は、初手イーユイと相手のガブリアスの対面で幕を開けた。

その対面ではフェアリーテラバーストと決めていたが、相手は襷で、おまけにしっかり岩石封じを撃ってきた。

素早さが逆転されたイーユイが地震で落とされても、ステロを撒かれても、その試合は負けていた。

だが、妻の強運が乗り移ったかのように、イーユイは岩石封じをよけてガブリアスを突破した後、裏のパオジアンを瀕死に追い込み、私は三桁に残った。

 

 

ヌメルゴン(ヒスイの姿)@突撃チョッキ
※特性:シェルアーマー
※性格:生意気
努力値:H236/A12/B4/C252/D4/S0
※技構成:冷凍ビーム、10万ボルト、ヘビーボンバー、地震
※テラスタイプ:フェアリー

「ハバタクカミとテツノツツミを何とかしろ、あとサーフゴーとヒードランも何とかしろ」という過酷な任務を負った軟体動物。

特性を変えた以外は、シーズン8の怠惰さんのヌメルゴンの丸パクリです。
ありがとうございました。

もともと私はヒードランが大好きで、チョッキ枠としてはヒードランを使っていた。
が、水テラスタルを切って瞑想を積んでくるハバタクカミにやりたい放題やられるので、やむを得ず変更。

圧倒的な特殊耐久はやはり魅力的で、対象に対してはきちんと仕事をしてくれた。
火力不足は否めないものの、技範囲の広さは抜群で、大体どのポケモンに対しても抜群がとれる。
有利対面で相手が誰に引いてくるのかということが比較的想定しやすいのがありがたく、交代読みで抜群を通す、という動きが強かった。

また、本来の役割対象ではないものの、シェルアーマーとフェアリーテラスタルでウーラオスとある程度戦えるのが本当にありがたく、これで何度か勝ちを拾った。
あとは、構築単位で見たときにキノガッサが(というか茸の胞子が)重く、当初は草食にしていたのだが、シーズン終盤で特に一撃ウーラオスにやられまくったことで、相手視点ではさすがに草技を押せないだろうと割り切って、シェルアーマーに変更。
いかにも草食っぽい顔をさせることで、胞子をハッタリで抑止していた。

 

ただ、シーズン最終盤にはほとんど選出の機会がなくなっており、別のチョッキ枠の採用も考えたが、構築に思い切ったメスを入れる勇気が出なかった。

 

 

⑥パオジアン@命の珠

※特性:災いの剣

※性格:陽気

努力値:H0/A252/B4/C×/D0/S252

※技構成:不意討ち、氷柱落とし、聖なる剣、テラバースト

※テラスタイプ:電気

最後に決まった枠。

というか、最終日のラスト4時間くらいしか使っていなくて、そこまで選出の機会もなかった。

ディンルーがどうにも重くて、ディンルーの選出を抑止することが構築に入れた狙いで、ほとんどフェイクに近い。

今までのシーズンで襷、鉢巻、珠、と色々なパオジアンを使ってきて、その強さはそれなりに知っているつもりでいるし、もっと強く使ってあげたかったな、という思いだけが残った。

そういう意味でも、今回は「構築が完成した」というような感慨はなく、何とかギリギリ三桁に滑り込ませた、という印象であった。

 

 

【4.重い相手】
キノガッサ
→実はこれがマジでヤバいのだが、ヌメルゴンが草食っぽい顔をしてごまかしていた。
もっとも、キノガッサの数は明らかに減っており、ほとんどあたることもなかった。


○ディンルー
→重いというか、ただ単にディンルーという存在がヤバいだけだと思うのだが、本当に苦労した。
最後までどうしたらいいかわからなかった。

○裏から出てくるパオジアン@襷

→先発で出てきてイーユイとまともに撃ち合ってくれればありがたいのだが、ラストでイダイトウとのワン・オン・ワンになると非常に苦しく、相手が勝手にイダイトウの高速移動を警戒して不意討ちをやめてくれる以外、勝ち目がなかった。

 

 

【5.イッツ・ジャスト・ア・ゲーム】
過去作の知識がなかった私は、レギュレーションDが発表されたとき、シーズン8が始まればまた三桁は遠ざかると思った(事実、そうなった)。
だから、レギュレーションCの最後、シーズン7に全てをかける気で挑んだ。
仕事の休みも重なった幸運な最終日だったが、幾度となく「ここで勝てば三桁は確定」という試合で負けて、シーズン7は1537位に終わった。
ここぞという場面での致命的な選出ミス、プレイミスもあった。
それが実力というものだ。
もうポケモンやめたい、とそのときは思った。
こんなに悔しい思いをするくらいなら、と。
終戦を終えた午前九時、床でまどろみながら、思った。
私より対戦歴の長い多くの人々は、多かれ少なかれこんな思いを、というか、もっと悔しい思いを乗り越えて、それでもポケモンが好きで続けてきたんだろうな、と。
みんなすげーな。
会ったこともない、これから出会うことすらない多くの人々に対して、よくわからない敬意みたいなものを覚えた。

覚えていないが酷い夢を見て目が覚めて、「三桁、駄目だった」と妻に言った。
「感じとしては、部活に近い」と私は続けた。
「一銭の得にもならないことに馬鹿みたいに真剣になって、もともとは楽しくてやっていたはずなのに」
そこまで言って、今はあんまり楽しくない、という言葉を、私は飲み込んだ。
私のイーユイが活躍する度に「それって妻のイーユイ?(略して)妻ユイ?」とはしゃぐ妻は、私を見て少し笑って、「そんなに真剣になれるものがあるなんて素敵ね」と言った。
それが多分、一番忘れてはいけないことなのだろう、と私は思った。

「たかがゲーム」とか、よく言うんだけど。
そんなこと言ったら、勉強だろうが仕事だろうがスポーツだろうが、私たちがむきになるもの、だいたいゲームなんじゃないの。
私はそう思う。
そういうわけで、私は今日もたかがゲームにマジになっている。
自分のふがいなさに何度苛立っても失望しても、真剣になれるものに出会えた幸運は、忘れずにいなきゃいけないんだと思う。

 

イダイトウというポケモンは、川を上る旅の途中に志半ばで散った仲間の魂をまとうのだという。
報われることなく構築から消えていった数多のポケモンたちと、胸を熱くするたかがゲームに出会えた幸運にときどき思いを馳せながら、私は激しい流れに抗っていきたい。

最後まで読んでくれたなら、ありがとうございました。

【SVシングル S4 最終333位 レート2025】吸血鬼は三桁の夢を見るか

【SVシングル S4 最終333位 最終レート2025】

「吸血鬼は三桁の夢を見るか」

TN:husky

 

【1.投稿の経緯】

スカーレット・バイオレットは、実に十年以上の時を経てのポケモンであった。

フェアリータイプの存在すら知らない無知の極みであった私は、シーズン1、ゆるく知識を詰め込みながら勝ったり負けたりを繰り返し、27216位でシーズンを終えた。

とても楽しかったが、結果については「まあ、こんなもんかな」と大した感想もなくシーズン2を迎えたその日、You Tubeで、シーズン1最終日のバンビーさんといろはさんの対戦動画を見て、胸が熱くなった。

レベルは違うけれど、「私ももっと強くなりたい」と子どものように思えた。

いい歳になって、何であれ、成長したいと心から思えたことは幸運なことだと思う。

そこからは、我ながら、まずまず熱心に勉強した。

ほとんど毎日欠かさず動画を見て、構築記事を読み漁った。

You Tubeという装置によって手軽に多くのプレイヤーの対戦を見たり考え方を知ったりすることが出来たのは、本当に助かった。

四桁順位を目標に挑んだシーズン2は、6612位。

三桁順位を目指したシーズン3は、1428位。

そうして迎えたシーズン4、三桁の達成記念に、本稿の筆をとった。

今シーズン、特に一桁、二桁の方々との勝負には、一戦一戦、胸が躍った。

心の底から楽しかった。

私にとってはまだまだ雲の上の方たちだが、雲が指先に触れるくらいのところまでには来られたように思う。

シーズン2の序盤、数々の構築記事を読みながら思っていたことは、「私もいつかこういうのが書けるような順位がとりたいな」ということであった。

それは、いい歳をした大人が抱くことが出来た小さな夢であって、その「いつか」が案外と早く訪れたことに、今は大変な喜びを感じている。

勝手に参考にさせていただいた動画配信者の皆さん、

構築記事を書いてくださった皆さん、

対戦してくださった皆さん、

ありがとうございました。

この場を借りてお礼を申し上げる。

 

 

【2.構築のコンセプトと経緯】

基本的には「耐えて殴る」の対面構築である。

敢えて対面構築を選んでいる、というよりは、サイクルを器用に回す技量が私にないため、今はこれしか出来ない、というところから構築が始まっている。

一時期流行った「セグカミラッシャ」を標榜しながら、実のところ、「あなたの思うようなセグカミラッシャじゃあないわよ」というのがコンセプトである。

 

シーズン2、3でときどき二桁の順位の方たちと対戦できるくらいのところまで行き、感じたのは「上に行けば行くほど変な型が出てくるな」ということだった。

いくら強いポケモンを並べたとしても、型がバレている、というのはやはり、大きな瑕疵なのだろう。

最低二体は型の読まれにくいポケモンが要る気がするわね、とこの素人は考えた。

そこで、シーズン2からずっとうちで活躍してきたADチョッキフルアタヘイラッシャは、対面性能の高さ、型の意外性、私自身の練度、どれをとっても申し分ないと思い、これを構築の組み始めとした。

シーズン2、3の経験から、こいつはやれるという確信があった。

続いて、どう考えても対面で強いとしか思えなかった硬いタイプのビルドレ型コノヨザルを物理アタッカーに、

頑丈という行動保証つきの眼鏡ジバコイルを、速い相手は耐えて殴れる、遅い相手は上から叩ける特殊アタッカーに採用。

ここでセグレイブをこれまた対面に強い襷枠として採用したが、構築単位で見たときに、「チョッキと言えば」枠のセグレイブとジバコイルがヘイラッシャの型を隠匿する役割を担っていて、その両者が構築に入っていながらまさかヘイラッシャがチョッキとは、お釈迦様でも気づくまいて。と、私は自身の思いつきに有頂天になっていた。

二体目の特殊枠には、ハバタクカミをHBベースのドレインキッスという妙な型で採用したが、これはもこうさんがYou Tubeで配信していた型の丸パクリである。

私は何のゲームでも「HPを吸いとる」という行為がなぜか病的に好きで、使ってみたくてたまらなくなって採用したが、これが相当強かった。

ここまで浮いたポケモンが構築に皆無で地面が一貫しすぎていたため、最後の枠にはキング・オブ・ザ・対面、(考えてみれば十年前に同じ型を使っていた)シンプルな鉢巻神速カイリューを採用して、構築が完成した。

 

 

【3.メンバー紹介】

①ヘイラッシャ@突撃チョッキ

※特性:天然

※性格:意地っ張り

努力値:H0/A252/B0/C×/D252/S4

※技構成:ウェーブタックル、地震、ヘビーボンバー、地割れ

※テラスタイプ:悪

ADチョッキフルアタ、人呼んで(私が呼んで)死屍累々ヘイラッシャ。

物理受けの皮を被った対面の鬼。

 

最終的な選出機会はそこまで多くなかったものの、間違いなく今シーズンの躍進の立役者でいらっしゃった(ヘイラッシャだけに)。

「物理受けだろ」とのこのこ出てきた特殊アタッカーを片っ端から葬りつつ、物理に対してもある程度の仕事ができる。

特にハバタクカミに対しては無類の強さを誇り、眼鏡ハバタクカミがフェアリーテラスタルして撃ってくるムーンフォースすら余裕で耐えて、ヘビーボンバーで確殺する。

何百体のハバタクカミを葬ったかわからない。

相手がヘイラッシャの型を誤認することでプレイングを狂わせ、本来の不利を覆せた試合も少なくなかった。

天敵は水ロトムで、マジで何も出来ない上に、構築的に地面がおらず、ボルチェンでやりたい放題やられるため、水ロトム入りには基本的に選出を避けていた。

 

技構成は、

打点の高いウェーブタックル(耐久を維持するためにアクアブレイクを採用していた時期もあるが、火力が足りないのと、自身が天然のため追加効果が無駄)、

サーフゴーを筆頭に、有象無象に撃てる地震

全てのハバタクカミを葬るヘビーボンバー。

残りの一枠は、雪雪崩と地割れを入れ替えながら使っていた。

雪雪崩は、テラスタルを切らずに突っ込んでくるカイリューガブリアスに致命傷を与えられるが、そういう場面は多くなかった。

地割れは決して好きな技ではないが、初手から巨剣突撃で突っ込んでくる失礼なセグレイブを確殺できるのと、ヘイラッシャミラー用、何より、どんなに不利な状況でも三割で勝ち筋が残されているという魅力には抗いがたかった。

試行回数の少ない地割れで勝ちを拾った試合の後、偽善者の私は、必ず「すみませんでした」とテレビ画面に頭を下げていた。

 

テラスタイプは悪。

シーズン中、他には草と地面のテラスタルを使っていて、どちらも強かったのだが、目の前で悠然と瞑想を積んでくるクエスパトラにあまりに腹が立ったため、「アシストパワー?効かねえよ!格闘テラバースト?こちとらチョッキだよ!」ということをやるためだけに、悪テラスタルを採用。

採用してから気づいたのだが、テツノツツミと渡り合えるのは、草や地面にはない魅力であり、特にラストのタイマンでテツノツツミを破って勝ちを拾った試合はいくつかあった。

 

シーズン2からずっと使ってきた構築の軸だが、今回も引き続き、先発に、中継ぎに、抑えに、とフル回転の活躍で、この絶妙にダサい寿司屋の大将が、私は大のお気に入りである。

 

 

②コノヨザル@食べ残し

※特性:やる気

※性格:腕白

努力値:H188/A4/B252/C×/D4/S60

※技構成:憤怒の拳、ドレインパンチ、ビルドアップ、挑発

※テラスタイプ:水

うちの吸血鬼(HP吸うやつ)その一。

「耐えて殴る」というこの構築のコンセプトの権化のようなポケモン

 

素早さは抑え気味の代わりに硬い、ビルドレ型コノヨザル。

抜群の安定感を誇り、マジで強かった。

 

憤怒の拳という反則的な技と耐久振りへの相性がよく、セグレイブやキョジオーンに対してもわりに勝負になるのと、受けに対して上から挑発を撃ってビルドを積み、アーマーガアすら突破できる、という具合に、際どい試合をこの子のおかげで何度も拾えた。

また、構築の中で催眠対策になり得るのがコノヨザルのみで、催眠野郎がいる相手には必ず投げて、丁寧に運用することを心がけていた。

素早さの調整ラインは、アーマーガアの上さえとれればいいと割り切ってもっと下げてもよかったのかもしれないが、大体のカイリューに対して上をとれるのもそれなりに大きく、ここは正直、何とも言えない。

 

技構成はシンプルなビルドレ型コノヨザルのそれ。

 

テラスタイプは水。

コノヨザルのテラスを炎から水に変えたのが、シーズン終盤の転換点だったかと思う。

炎テラスは、鬼火を警戒しつつゴースト技・フェアリー技の抜群を切り、憤怒の拳で殴り返す、というムーブが決まれば強いが、何しろ完璧に読まれる。

何より、ビルドを積んだ後にテツノツツミが出てきてドロポン撃たれて終わり、という負け方が多すぎた。

このパターンを何とかしない限り三桁には残れない、と判断し、セグレイブが多い環境でそんなに鬼火はポンポン飛んでこないだろうと割り切って、ほぼテツノツツミ一本のために水テラスタルを採用した。

そして、その決断は正しかったと思う。

「相手のカバルドンに初手挑発→カバルドンステロ撒けない→交代読みのドレインパンチで抜群とってテツノツツミを追い込む→ドロポンを水テラスタルで耐えて殴り倒す」

というのが必殺ムーブになり、ステロは撒かせないわツツミは倒すわ、相手のツツミの火力によっては水テラスを消費させられるわ、鬼火が通ってしまう非を補って余りある成果があった。

また、トドロクツキに対して、テラスタルを切らなければアクロバットで抜群をとられるし、炎テラスタルにしたところで地震を抜群で撃ち込まれる、ということがなくなり、ある程度勝負できるようになったのもありがたかった。

 

 

③ハバタクカミ@ブーストエナジー

※特性:古代活性

※性格:図太い

努力値:H244/A×/B244/C4/D4/S12

※技構成:シャドーボール、ドレインキッス、瞑想、甘える

※テラスタイプ:鋼

うちの吸血鬼(HP吸うやつ)その二。

ヘイラッシャと並んで、型の意外性が強みの枠。

 

もこうさんが動画で紹介していた型の丸パクリ(テラスタイプは変更した)。

考案したのはもこうさん自身ではないそうだが、考えた人にも紹介した人にもマジで頭が上がらない。

このハバタクカミなくして、今シーズンの結果はあり得なかった。

 

この型のハバタクカミにはシーズン中、一度も出会わなかったが、なぜ使われないのかわからないくらい強かった。

速度をブーストエナジーに依存しているためサイクル戦には向かないが、対面構築の一員として使うには極めて優秀である。

 

HBに振ることで苦手な物理に抗いつつ、Sはブーストエナジーで補う形。

甘える&ドレインキッスで、相当な範囲の物理アタッカーに対して粘れる。

問題は火力のなさで、いかに瞑想を積むかが勝負どころ。

これをつかむのにちょっと時間が必要だったが、コツがわかると、あらゆる構築に対して投げたくなるほどの汎用性を誇った。

 

鉢巻ガブリアスの地面テラスタル地震、みたいな爆発力には対応できないが、大体の物理アタッカーは完全にカモで、甘えるで相手を封殺しつつ瞑想を積み、全抜きもあり、終盤のスイープもあり、数的有利をとった後に相手の物理アタッカーに甘えるを撃ち込んで退場するのもあり、と八面六臂の活躍であった。

 

あとは多分、全てのカイリューに対面で負けない。

ということで、カイリュー入りの構築に対しては必ず投げて、カイリュー対策をほぼ一任していた。

 

テラスタイプは鋼。

もともとは神速をケアしつつ火力を補えるゴーストテラスで運用していた(元の紹介動画ではそうだった)が、ドドゲザンとの対面になる機会が多く、テラスタル込みでもどういっても勝てないのを何とかするために、鋼を採用。

対ドドゲザン、全勝とはいかなかったものの、本来の不利対面をしばしば覆してくれた。

 

 

ジバコイル@拘り眼鏡

※特性:頑丈

※性格:控えめ

努力値:H0/×/B4/C252/D0/S252

※技構成:10万ボルト、ボルトチェンジ、ラスターカノン、テラバースト

※テラスタイプ:飛行

一番好きなポケモンかもしれない、シーズン1から手を変え品を変え採用し続けているジバコイル

昨今ではDに厚く振ってクッションとして運用するジバコイルが流行っているようで、それも強いとは思うが、私には一撃に特化した眼鏡の方が性に合っていた。

シーズン1のように猫も杓子もステルスロック、という環境ではなくなり、代わりに毒びしが増えたことで、頑丈による行動保証が得やすくなって、出ていける機会が増えたのもありがたかった。

また、特にセグレイブが襷であると割れた時点で、ジバコイルのチョッキ&アナライズを想定して相手が動いてくることも多かったため、型誤認により有利をとれた対戦も多かった。

 

その破壊力もさることながら、準速のため上から殴れる範囲が意外と広いのが大きい。

耐久型のカイリューや、大体のラウドボーン(歌うやつを除く)をはじめ、アーマアガア、ハッサム、ミミズズ、あたりに上がとれるのは大変助かった。

頑丈を含めると、相当な対面性能を誇る。

マルスケの削れた遅いカイリューが呑気に羽休めをしてくるのを上からぶっ叩いて追い込む、というような場面は度々あった。

 

テラスタイプは飛行。

地震を完全スルーできるからそりゃ強いし、特にカイリュー対面ではこれで勝つこともあったが、メジャーなだけに読まれやすく、特にセグレイブに対しては、テラスタルを切ったら読まれて氷柱針で撃墜されるし、切らずに突っ込んだら地震を撃たれるしで、あまり安定しなかった。

なお、飛行テラバーストにそれほど使用機会はなく、強いて言うならコノヨザルやウルガモスに抜群がとれるのだが、それで勝ちを拾った試合も特になかった。

 

構築的に、地割れも含めたヘイラッシャにきちんと対応できるのがほぼジバコイル一択なので、ヘイラッシャ入りの構築に対してはこの子を必ず投げざるを得なかったし、ジバコを大切に扱うことを意識して試合を進めた。

一度、ヘイラッシャの地面テラスタルボルトチェンジを封殺されて地震で返り討ちにされたことがあり、以来、ヘイラッシャに電気技を撃とうとする度にその記憶が蘇って全身が震えたが、幸いなことに、ただ一度の経験で済んだ。

こういうのもまた、テラスタルというシステムの醍醐味と言えばそうなのだろう。

 

 

⑤セグレイブ@気合の襷

※特性:熱交換

※性格:意地っ張り

努力値:H4/A252/B0/×/D0/S252

※技構成:氷の礫、巨剣突撃、地震、竜の舞

※テラスタイプ:ドラゴン

物理エースにして、この構築の正体の隠匿役。

「チョッキと言えばこいつ」のセグレイブとジバコイルが構築にいながら、「実はヘイラッシャがチョッキでしたー」というのがこの構築のチャームポイント、じゃなかった、ストロングポイントではないかと思っている。

 

セグレイブというポケモンは本当にポテンシャルが高く、チョッキも強い、珠も強い、襷も強いで、大体どう使っても強い気がする。

鬼火が効かない物理アタッカーというだけでもう、強烈である。

気合の襷型の利点としては、

終盤の数的不利を単独で逆転しなくてはいけないケースで、竜の舞を積むための行動保証が得やすい点、

先手での巨剣突撃→相手の技が2倍で入るのを襷で耐えて→氷の礫、という反則的な戦法が可能である点、

テツノドクガ@拘り眼鏡with炎テラスタルがオーバーヒートを放ってきたのを襷で耐えて→熱交換発動しちゃって→返り討ちに出来る点、

などなどであった。

 

技構成は、巨剣突撃と氷の礫と竜の舞が確定、

地震は氷柱針との選択で悩んだが、汎用性の高さと安定性、テラスタルを切ったときの威力を買った。

氷柱針ならではの強みはもちろんあるが、イカサマダイスでない以上、ギャンブル性の高さがどうにも好きになれなかった。

しかしまあ、どうでもいいことだが、イカサマダイスというアイテムは、「ギャンブルはイカサマをした瞬間にギャンブルでなくなる」という本質を突いている気がして、何ともセンス抜群である。

 

テラスタイプは、最初は地面で運用していたが、シーズン中盤からドラゴンに変更。

安定性では地面だが、あまりに読まれ過ぎて、完全に相手の想定の範疇に留まるのが引っかかった。

ドラゴンテラスタル巨剣突撃の威力が尋常ではないため、相手の想定する確定数をずらす切り札としては、こちらがなかなか強かった。

が、基本的には「テラスタルを切らなくても強い枠」としてセグレイブを運用していたため、使用機会は多くはなかった。

 

 

カイリュー@拘り鉢巻

※特性:マルチスケイル

※性格:意地っ張り

努力値:H244/A252/B0/×/D0/S12

※技構成:逆鱗、神速、地震、炎のパンチ

※テラスタイプ:ノーマル

ハバタクカミが「最強」の名をほしいままにしたシーズンだったが、うちの死屍累々ヘイラッシャがあまりにハバタクカミに強かったので、私はどうもハバタクカミ最強、という印象にならずに、相変わらずカイリューが最強、という気がしていた。

(そんなこと言ってお前、カイリュー対策をハバタクカミに一任していたじゃねえか、と言われれば、まあ、そうなんだけど。)

 

今更言うまでもないが、型の匿名性と、個々の型の強さがあまりにも突出している。

 

いたってシンプルなノーマルテラスタル鉢巻神速カイリューだが、HAにほぼ極振りしている点と、炎のパンチがちょっと珍しいかもしれない。

素早さを無視して、タフに殴り合うことに特化して使い始めたのだが、実際のところ「もう少し速けりゃな」という場面があまりなく、逆に「うわ、それ耐えるのかよ」と命拾いした場面の方が多かったので、そのまま運用し続けた。

おそらく、攻撃に特化したカイリューとしては、相手の想像するどのカイリューよりも硬かったのではなかろうか。

 

相手のパーティが何をやってくるかよくわからないときを含めて、「困ったときのカイリュー」というか、用心棒的な役割で投げていた。

また、このカイリューを使い続けることで、素人の私が多少なりとも「技の一貫性」という方向に思考が回る訓練になった気もする。

 

技構成は、

とにかく私が愛してやまない神速、「きえええ」と叫んで(←カイリューが。私ではない)放つこの技が、私の最も好きな攻撃技かもしれない。

例によって無難に強い地震

撃てる場面は限定的だが、通ることがわかればえらいことになる最終奥義の逆鱗、

時代遅れの炎のパンチ。

この炎のパンチが、流行らないだけに意外と決まる場面があり、鉢巻だけに威力も馬鹿にならない。

これがあることで、アーマーガアや、鋼テラスを切ったHB水ロトムに対しても強く出られるのが大きかった。

一度、こちらがカイリュー、相手がアーマーガアとドドゲザン、という残り方をしてしまったことがあり、ここから炎のパンチだけで撃退したときは感動した。

 

 

【4.選出と立ち回り】

対面構築である以上、選出が勝敗のかなり大きなウェートを占める。

あくまで現在の私の力で判断できる限りにおいてだが、負けた試合(200敗以上した)、体感的には、

「選出(ないし先発)ミスったな」という負けと、

「もっと上手く立ち回れば勝てたんだろうな」という、つまりプレイングの未熟さによる負けと、

「これはどうやっても勝てなかった気がする」、つまり構築段階で既に負けている(後述するが、いわゆる「運負け」もこの内だと割り切っていた)、というのが、

同じくらいの割合であったような気がする。

 

基本選出、という形は決まっておらず、相手の六体を見て、

「誰を誰で見るか」ということと、

先発で最悪の事態にならないこと、

誰を大切に扱わないといけないか、

ということを常に考えていた。

ただ、それがどの程度正しかったのかは、正直よくわからない。

 

①ヘイラッシャ

この大将が刺さりそうか、ということを選出では最初に考えていた。

主には、水ロトムがいなくてハバタクカミのいる、という条件の特殊寄りの構築に対して選出する形が多かった。

また、クエスパトラ入りの構築と、大嫌いなオニゴーリの野郎には必ず選出していた。

ハバタクカミは対面で確実に処理でき、サーフゴー、テツノドクガも見られる。

テツノツツミ、ジバコイルはテラスタルを切れば何とか、という位置。

 

②コノヨザル

ラスタル込みで考えれば、かなり幅広い相手と撃ち合える。

挑発でアーマーガアを起点に出来たり、キョジオーンと勝負できたり、助かりまくった。

キノガッサ、アラブルタケなどの催眠野郎対策も一任していた。

加えて、ジバコイルの頑丈をどうしても保持したい、という相手にカバルドンがいるときは、初手のカバルドンに投げて挑発を撃ち、何が何でもステロを撒かせない展開に持ち込むこともあった。

その場合、相手にテツノツツミがいると100%に近い確率で出てこられてドロポンで終わるため、水テラスタルで切り返せるプランを用意していた。

カバルドン読みが外れた場合も、初手コノヨザルが普通はビルドレ型とは思われないため、相手が型を誤認したことにより、有利な展開になりがちなのもありがたかった。

 

③ハバタクカミ

幅広い物理を見られる。

おそらく全てのカイリューに対面で勝てる枠として、カイリュー対策をほぼ一任していた。

相手の初手キラフロルや毒びしマスカーニャに合わせて先発で出していきなり瞑想を積み、慌てて出てきた物理に甘えるを撃ち込むと、もう止まらない。

(が、調子に乗っていたら、毒びしマスカーニャの流行がシーズン半ばくらいで終わり、トリックフラワー連発してくるのが出てきて、やりたい放題は出来なくなった。)

また、鋼テラスタルを採用した唯一の理由であるドドゲザンに対面で撃ち勝ち得るのも大きかった。

もちろん、甘える前提の話なので、相手が負けん気だと終わるのだが、幸い、その機会は一度もなかった。

 

ジバコイル

ヘイラッシャ入りの構築には必ず選出していた。

特に、こちらのコノヨザルやセグレイブと相手のヘイラッシャが対面したとき、相手が地割れを放ってくることが多かったので、ジバコイルにバックして有利対面を作る、という動きが強かった。

頑丈が残っている前提だが、水テラスタルイルカマンを一撃でしとめる役割も担う。

その場合、何が何でもステロを撒かせられないので、コノヨザルで強引に挑発を撃っていた。

キョジオーン、ラウドボーンを上から叩いて追い込む枠、テツノツツミに対面で強い枠としても選出していた。

また、ハバタクカミに比較的強く出られる点も助かった。

 

⑤セグレイブ

襷の行動保証により対応できる相手は幅広く、先発での起用が多かった。

先発で一体持っていった後に、余裕があればバックして終盤のスイーパーを任せることもあった。

が、鋼ないしフェアリーテラスタルのHB水ロトムに対して何も出来ないのは痛く、水ロトム入りには選出を避ける形。

先発では何しろ相手のセグレイブとミラーマッチになることが多く、その場合はノータイムで巨剣突撃を撃ち込み、相手が準速でなければ襷で耐えて対面勝ち、相手が同速の襷持ちだった場合は最悪、礫の撃ち合いの運頼みに賭けていた(相手が引くことも多かった)が、これは正直、間違いだった気もする。

当然、相手が陽気セグレイブだったら終わるのだが、そんなのいねえだろ、と割り切っていた。

また、相手の初手コノヨザルとぶつかった場合、シーズン前半は面白いように命がけが飛んできたため、初手から竜舞を積んで、コノヨザルが命を散らした後には舞ったセグレイブが残ってイージーウィン、という展開がとても美味しかった。

が、シーズン中盤以降、明らかにセグレイブをメタった先発の襷コノヨザルが激増したため、先発での選出は一気に減った。

 

カイリュー

主には終盤のスイーパーとして運用。

また、相手が何をしてくるのかよくわからないときや、「もうどうしたらいいかわかんねえ」というときに、用心棒的に選出していた(困ったことに、そういう機会はかなり多かった)。

特に相手のイルカマンに対しては、ジバコとカイリューの二枚で見る、という形が基本。

鉢巻であるゆえ、神速、逆鱗、地震、炎のパンチ、いずれかが一貫する展開にどう持っていくか、ということを考えながら運用していた。

 

 

【5.雑感】

構築の決定的な弱点として、いわゆる「運負け」の多さがある。

が、これは私が不運なわけでも何でもなく、「耐えて殴り返す」という戦法を用いる以上、どうしても被弾数が多くなり、必然的に急所やひるみのリスクは上がる。

しかしまあ、「完璧な構築なんてないさ」と割り切って、私は今の私に出来る戦法で戦い続けた。

 

構築の大枠はシーズン3から練り上げたものであり、四凶が解禁された環境ではおそらく通用しなくなるだろうと思っていたので、死屍累々ヘイラッシャと吸血鬼コンビを中心としたこのメンバーで三桁が狙えるのは最後のチャンスだろう、という少しだけ切ない思いを抱きつつ潜っていた。

 

レートが2010を超え、「もう一戦だけ」と挑んだシーズン最終戦、私としては完璧な立ち回りをして、ラストに襷セグレイブ同士(同速だったはず)の礫の撃ち合いになり、「運を、天に」と漫画の主人公のように呟いてAボタンを押したコントローラーを置いたときの感動を、永く忘れない気がする。

 

冒頭にも書いたとおり、いい歳になった大人が、一円の得にもならない何かに対して子どものように成長と上達を志し、また、それを心から楽しめたことは、本当に幸運なことだと思う。

どれほど「運負け」と呼ばれる敗戦を繰り返そうと、その幸運だけは、揺るがないものとしていつも私の胸にあった。

最後まで読んでくれたなら、ありがとうございました。