【SVシングル S19 最終320位 レート2001】月光は欺く

【SVシングル S19 最終320位 最終レート2001】

「月光は欺く」

TN:roka(メインロムhusky)

 

【1.はじめに】

SVからの新参者の私は、先月、とりあえずゴールデンウィーク初日に剣盾を買った。

剣盾はとても楽しかった。

さて、白馬バドレックスやザシアンをひっ捕まえてシーズン18に臨んだが、まるで勝てず、最終順位は6000位くらいに沈んだ。

唯一の収穫は、伝説環境においても、これまでのシーズンで培ってきた経験値がまるで活きないわけではない、ということが実感できたことだった。

個人的にはポケモン初の伝説環境で、ほとんど別のゲームになるのではないかと考えており、それはあながち間違ってもいなかったが、「これなら十分に戦える」という感触をつかめたことには安堵した。

同時に痛感したのは、何をやるかがバレバレの構築というのはやはり自分にはきついな、ということだった。

シーズン18はその大半をオーソドックスなトリル白バド構築で潜っていたが、プレイングが拙い私にとって、相手の想定を外せる強い装置が構築にないとどうにもならない。

そこで、相手の想定を裏切れる要素、奇襲的なパートをいかに作るかということを、抽象的だが、シーズン19の最初の課題とした。

 

【2.構築の経緯】

シーズン18終了直後から、思考停止でX(旧ツイッター)に潜り、「早く誰か構築記事上げてくれ」と他力本願も甚だしい姿勢で臨んだ。

その中で、毒びしとルナアーラを組み合わせたlazyさんの構築記事が最初に目に留まり、面白そうだけど私に毒びし展開なんて器用なことが出来るのかしら?でもルナアーラって見た目がいいじゃん、ファントムガードなんて何かスタンド能力みたいでいいじゃん、というところから構築がスタートした。

ただ、前シーズンの反省から、構築のかなり根本的なレベルで相手の想定を裏切る要素がないと私は勝てない、ということが身に染みていたので、毒びしと組み合わせてルナアーラで積んだり回復したり色々やるという構築に見えて、全然違うわよ、という構築が組めないものか、と即座に考え直して、毒びし展開偽装の対面ぶん殴り構築をいったん組んでみよう、と思った。

そこで、ルナアーラを眼鏡のアタッカーで採用。

いかにも毒びしを巻きそうな枠として、キラフロルを襷のフルアタで採用。

特殊伝説に対して強い枠として、長きに渡り全幅の信頼を置いてきたチョッキディンルーを採用。

ここまでで速いポケモンがいないので、軽業込みでほとんどの相手を抜きされる物理エース、かつ、相手により強く毒びし+耐久型ルナアーラの幻想を見せるため、オオニューラを採用。

シーズン序盤はママンボウ@ゴツメを願い事で使っており、ルナアーラのファントムガード復活を目論んでいたのだが、ザシアン・コライドン・パオジアン・ウーラオスなどの強豪たちに容易に積まれるわ、考慮外から身代わりは貼られるわ、全く上手く使えず、より単純な物理受けとしてヘイラッシャを採用。

あとの一体は流動的だったが、こちらの構築が基本的に鈍足の耐久型であるため、特にシーズン中盤、パオジアンに好き放題絶対零度を撃たれ、負けた。私はポケモンというゲームが好きだし、たくさん感謝しているので、あまり文句は言いたくないのだが、それでも、パオジアンに絶対零度を与えたことだけは絶対間違いだと思っている。まあ、そんなことを言っても仕方がないので、パオジアンに対してある程度強い枠として連撃ウーラオス@スカーフを採用。

構築が完成した。

 

最終的にはまるで違う構築になったものの、lazyさんの構築記事を読んでいなければ、この構築にはなっていなかった。

lazyさん、ありがとうございました。後ほどDMを送らせていただきます。

なお、構築名は、ルナアーラと、うちで飼っているヒョウモントカゲモドキの「月光」から拝借した。

うちの月光。性格は控えめ。とても可愛い。

 

【3.構築のコンセプト】

キラフロル+オオニューラ+ルナアーラで毒びし展開の幻想を見せ、対面的に殴り勝つ。

 

【4.メンバー紹介】

ルナアーラ@拘り眼鏡

※特性:ファントムガード

※性格:控えめ

努力値:H212/A×/B44/C252/D0/S0

※技構成:シャドーレイサイコキネシスムーンフォースサイコショック

※テラスタイプ:フェアリー

構築の軸。全試合、選出した。

ファントムガードという反則的な特性を盾に、眼鏡の火力を押しつけるエース。イメージとしては遅い代わりに行動保証のある眼鏡ハバタクカミ、みたいな感じで、実に頼もしかった。

相手が何も撒いてきそうにないときは裏に控えることもあったが、初手に投げることも多く、裏にも通る技を押せるように、ルナアーラ対面で相手がどう立ち回るかの経験値を稼いで練度を上げることを、シーズン通じての命題とした。

毒びしを携えた瞑想&月の光を警戒されがちなのと、催眠術空振り保険というおぞましい型が周知されたことにより、挑発を撃たれることもちょくちょくあり、その時点でほぼ試合を終わらせていた。

受けループに対してサイコショックを撃ち込めるのもポイントが高い。

テラスタイプはずっと迷いながら使っていたが、結局、フェアリーの安定感を買った。耐性を変化させつつ、ムーンフォースを強化する目的もあったが、構築にフェアリータイプがいないので、ディンルーのフェアリーテラスタルと合わせて、ドラゴン技の一貫を切れる要素を構築に複数組み込みたかったのもあった。

努力値は、臆病CSにしても抜けない相手が多すぎるし、個人的な好みもあって、どっしり構えて2発耐える対象を増やせるように、耐久に厚く振った。

正直、正統な(と言っていいものかわからないが)伝説ポケモンと破壊力の面で比較すると、スペックは劣っていると思うし、伝説ポケモンとの撃ち合いには強くない。

それを補うのが瞑想・月の光みたいな型になるのだろうが、その先入観を構築単位で逆手にとることで、強く動かせたのではないかと思っている。

実に私好みの運用であり、今期を通じて最も好きなポケモンのひとつになった。このルナアーラと共にそれなりの結果を残せたことは、とても嬉しい。

 

②キラフロル@気合の襷

※特性:毒化粧

※性格:控えめ

努力値:H4/A×/B0/C252/D0/S252

※技構成:パワージェム、ヘドロ爆弾、大地の力、エナジーボール

※テラスタイプ:草

まさかのフルアタキラフロル。

見た目は大好きなポケモンだが、どうしても上手に使えず、三桁に入ったシーズンで一度も構築に組み込めたことがなかった。今回も基本的には選出誘導とルナアーラの型を誤認させるための見せポケで、どうせ毒びしなんか撒かないし、何なら選出すらしないつもりで入れた。が、潜っているうちに、ちょくちょく刺さる相手がいることがわかり、特にカイオーガ構築とホウオウ構築には積極的に出して、かなり活躍してくれた。

カイオーガはキラフロルを見て100%初手に来たが、相手のカイオーガが速くても襷で耐えてエナジーボールでかなりのダメージが入るし、遅いカイオーガは2発目のエナジーボールを上から撃たれたら命が危ない。いずれにしても、裏からオオニューラで処理できる形にもっていける。

ホウオウに対しては、パワージェムを切って立ち回ってくるナメた不死鳥を瞬殺し、警戒して引っ込む賢明な相手の裏にも、何かしらの技が大体刺さった。

また、本構築において、胞子と宿り木をテラスタルで封殺できる唯一のポケモンであり、毒テラスタルを切って詰ませにきたチオンジェンを返り討ちにすることは何度かあった。

他にも、襷を残して裏からキラフロルが出せたらまず勝てるな、という試合にはときどき選出し、出した試合はほぼ全て勝った。

おそらく環境的に襷フルアタのキラフロルなんてあまりいないので、控えめ特化の火力が想定されにくく、また、何かしらの技を切って立ち回ってくる相手が多かったため、その広大な技範囲が特定の場面においてはかなり刺さった。

最大の功績は選出誘導で、例えば「相手の構築に毒びしが刺さりまくっている以上、初手は黒バド以外にないでしょ」というように割り切って初手ディンルーを合わせる、といった選出が可能になったことにある。もう少し選出してあげたかったが、ある意味でこの構築の顔であり、いないことには構築自体が成立しなかった。

 

③オオニューラ@ノーマルジュエル

※特性:軽業

※性格:意地っ張り

努力値:H0/A252/B132/C×/D/S124

※技構成:フェイタルクロー、インファイト、炎のパンチ、猫騙

※テラスタイプ:ステラ

不穏すぎるエース。

シーズン18のしゃるさんの構築記事から拝借した。ありがとうございました。

もともとは、毒びし+耐久型ルナアーラ、という幻想を相手に見せるために採用した向きが強かったが、ルナアーラやディンルーに対して相手の黒バドやミライドンがテラスタルを切ったとき、ほとんどの場合でこのオオニューラが通る、ということがわかってからは、構築の圧倒的エースに飛躍した。

ミライドンがフェアリーや氷テラスタルを切った場合、あるいは、黒バドレックスがフェアリーや草やノーマルテラスタルを切った場合、いずれの場合もオオニューラのメイン技が抜群で通る。

これは強い、となったところで立ちふさがるのがハッサムである。

「ミライドンがフェアリーテラスタルマジカルシャインでディンルーを強引に突破してくる」

「オオニューラを出して猫騙しを撃つ」

「相手ゴツメハッサムに引き、オオニューラの拳が血に塗れる」

このパターンがマジで多すぎて、ハッサムを逆にカモれる炎のパンチがとても強かった。

軽業発動後の素早さは、最速テツノツツミ@ブーストエナジー+2に調整されており、ミラーを意識すると準速も考慮に入れたが、これ以上耐久を削ってしまうと剣の舞を積んだハッサムバレットパンチを耐えない恐れがあり、素早さはギリギリのラインかと思った。

そしてもちろん、「もう駄目だ」というときに「何か起きろ!」と叫んで振りかざすフェイタルクローが、しばしば何かを起こした。

 

④ディンルー@突撃チョッキ

※特性:災いの器

※性格:意地っ張り

努力値:H0/A252/B4/C×/D252/S0

※技構成:しっぺ返し、地震、ヘビーボンバー、地割れ

※テラスタイプ:フェアリー

ポケモン界広しと言えども、こんなにチョッキディンルーばっかり使ってきた人間が他にいるのか、と思うくらい長きに渡る相棒枠。伝説環境でも強いのが嬉しくて仕方がない。

ミライドン、黒バドレックス、テラパゴス入りの構築に対しては必ず選出していた。

特に黒バドレックスに対しては、全ての型に勝てるわけではないものの(特に宿り木型にはこのディンルーは絶対に勝てない)、それでも上記の三体入りの相手に安定した勝率を誇ったのがレートを稼げた要因であり、それはひとえにチョッキディンルーのおかげである。

技構成は、他のポケモンにテラスを吐かせた後の黒バドを確実に葬れるしっぺ返し(鬼火ごときを入れられても余裕で殴り勝てる)、汎用性の高い地震、ハバタクカミやフェアリーテラスタル黒バドを刈りとるヘビーボンバー、あとの一枠はカタストロフィやテラバーストとの選択になるのだろうが、裏に入れられる90%の削りの効率性より、どうにもならないケースで常に30%の勝機を残せる地割れを買った。

特に、相手のラストが黒バドだと思ってディンルーを温存していたら相手物理じゃん、というようなケースは、地割れがないとまず勝てない。あとは、防御に厚く振って瞑想を積んでくる耐久型、今シーズンは主にテラパゴスを地の底に落としまくった。レート2000がかかった最終戦、ラッシャの欠伸展開の前に地割れを一撃で当てて試合を終わらせたときの高揚は忘れられない。

テラスタイプは、諸々の抜群を切りつつ、構築に一貫しているドラゴン技をカットできるフェアリー。宿り木型の黒バドを封殺するための草テラスタルも考えたが、宿り木型だとわかる前に草テラスを切る動きが弱すぎるのと、ミライドンの氷テラバーストへの耐性を上げられないことが気になり、やめた。

 

⑤ヘイラッシャ@ゴツゴツメット

※特性:天然

※性格:腕白

努力値:H252/A0/B252/C×/D4/S0

※技構成:雪雪崩、地割れ、欠伸、眠る

※テラスタイプ:ゴースト

私がHBヘイラッシャの扱いが下手すぎるゆえ、選出機会がない、というより選出タイミングがわからなかった。コライドン入りや白バドレックス入りに出してあっさり負けているようでは話にならない。

また、シーズン序盤の経験から、この構築は「ルナアーラ+ディン+ラッシャ」という選出をするとパワーとスピード不足で圧倒的に弱いことがわかったので、その選出をしなくなり、以降、ほとんど対ザシアン専用兵器と化していた。

そして、ゴチルゼルがあまりにムカつくのでゴーストテラスタルにした。

が、シーズン中盤、一晩で三度ザシアン構築に当たり、意気揚々とヘイラッシャを選出したら、三人ともザシアンを出して来ずに、負けた。

で、「何なんだよ、ヘイラッシャいたらザシアン来ないのかよ」と思って翌日はザシアン構築にヘイラッシャを投げずに挑んだら、今度は三回ともザシアンが出てきて、なすすべもなく負けた。

「マジで何なんだよ」と思って、以後はザシアン構築にはヘイラッシャを出そうと心に決めたが、それからというもの、ほとんどザシアン入りに当たらなかった。

マジで何なんだよ。

圧倒的な選出機会の少なさから構築から外すことを何度も考えたが、積んでくるタイプの連撃ウーラオスが何より恐ろしく、それに対する一定の抑止力として外せなかった。

 

⑥ウーラオス(連撃の姿)@こだわりスカーフ

※特性:不可視の拳

※性格:意地っ張り

努力値:H4/A252/B/C×/D/S252

※技構成:インファイト、水流連打、アイススピナー、蜻蛉返り

※テラスタイプ:水

イマイチ決まらなかった最後の枠。

とにかく相手にパオジアンを出してほしくなかった。あのポケモンは精神衛生上よくない。キラフロル・ヘイラッシャ・ウーラオスといれば、少しはパオジアンを出しにくくなるだろう、ということで入れた。

選出タイミングはイマイチわからなかったが、どの伝説を見て、ということではなく、通りそうな相手に投げていた。

できるだけ裏から出すことで、スカーフを想定されにくい中で通すことを基本にした。

 

【5.選出と立ち回り】

 

≪基本選出≫

ルナアーラ+ディンルー+オオニューラ

半分くらいはこの選出をしていたと思う。

 

相手の伝説別に選出や立ち回りをある程度決めてパターン化することで再現性を上げることをシーズン序盤から心がけていた。

これまでの環境と異なり、当然のことながら、自分も相手も伝説ポケモンが構築の軸になるので、整理して考えやすいように思った。

 

①VS黒バドレックス・ミライドン・テラパゴス・ルギア入り

ルナアーラ+ディンルー@1(ほぼオオニューラ)

相手の取り巻きによって、初手をルナアーラでいくかディンルーでいくかは流動的。テラパゴスとルギア入りには、ディンルーを大切に残す(テラパゴスとルギア以外の相手をさせない)ことを心がけた。

 

②VSコライドン入り

ルナアーラ+オオニューラ@1

これが一番困った。そもそもコライドンの強い型が多すぎる。本来出したいヘイラッシャの扱いが下手すぎて全く信頼できず、最低でもコライドンをルナアーラで削って、裏のオオニューラでぶん殴る、というのを基本線としたが、勝率は5割を切っていたと思う。

 

③VSザシアン入り

ルナアーラ+ヘイラッシャ@1

ザシアンが出てくることを願うしかない。

 

④VSホウオウ・カイオーガ入り

→キラフロル+ルナアーラ@1

全てのホウオウが初手に出てきたのでパワージェムで圧をかけ(相手がテラスなしでつっぱってきたら大体試合が終わる)、全てのカイオーガが初手に出てきたのでエナジーボールで圧をかけ、お前は本当にキラフロルなのか?という役割をキラフロルに負わせた上で、ルナアーラを含む残りの二体で何とかしていた。

 

⑤VS白バドレックス入り

ルナアーラ@2

オーソドックスなトリル構築がこの構築は相当重い(遅延できる手段が猫騙しくらいしかないため)のだが、あまり当たらなかった。宿り木黒バドは怖すぎるが、宿り木白バドはルナアーラである程度対処できるので、あまり怖くなかった。いずれにしても初手ルナアーラで圧をかけにいっていた。

 

⑥ムゲンダイナ入り

ルナアーラ+ディンルー@1

当たった回数は少ないが、ほぼ全敗していた。構築として絶対に勝てない、という相手ではないと思うのだが、受け構築系に対する私の対処が下手すぎて、ルナアーラサイコショックが一発決まったくらいでは勝てなかった。最終的にディンルーの地割れを連打する、というような、醜いプレイングに陥ることが少なくなかった。

 

⑦VSルナアーラ入り

ルナアーラ+ディンルー@1

負けなかった、という記憶しかない。ルナアーラ構築で高みを目指す人間がルナアーラに負けるわけにはいかない、という意地と執念だけで勝っていた。というのは錯覚で、ディンルーが強かっただけだと思う。

 

【6.重いポケモン

重いポケモンにメジャーなやつ多すぎだろ、とは思うが、選出誘導である程度回避していたことは考慮してもらいたい。

 

①宿り木型の黒馬バドレックス

→チョッキディンルーで黒バドを対処している諸兄にとって、とても恐ろしいポケモン。ディンルーが対面で黒バドに負けても最悪テラスは切らせられるからオオニューラが通る、というプランも崩壊する。

 

②コライドン

→型が多すぎる。ラッシゃで止まる型以外は切る、という割りきった立ち回りでよかったのかもしれないが、どっちつかずの対応をしてしまったことに悔いが残る。

 

③パオジアン

→見た目的にはパオジアンが重い構築ではないが、基本選出(ルナアーラ+ディンルー+オオニューラ)がパオジアンに来られるとヤバい。とにかくパオジアンを出されたくなくて、ヘイラッシャと連撃ウーラオスで脅しをかけることで対策としており、実際、そこまで出されなかったので、セーフと言えばセーフかもしれない。

 

④連撃ウーラオス

→これもパオジアンと同様、私がラッシャを出さない前提で選出を考えているせいで、非常にきつかった。特に、ディンルーが相手の黒バドやミライドンなどと対面したとき、余裕で後出ししてくる(つまりディンルーの地震を2耐えする耐久の)連撃ウーラオスが本当に恐ろしかった。ディンルーを失うと黒バドやミライドンに対処できないから引きたいが、基本選出をしていると引き先がいない。また、毒びし回収役と組んでいる連撃ウーラオスは、こちらの初手がキラフロルだとしても余裕で先発から水流連打を撃てるので、そういう構築に対しては初手ディンルーが選出できず、ルナアーラで対面を勝ちにいっていた(襷でなければとりあえず対面では勝てる)。

 

⑤裏から出てくる霊獣ランドロス

→基本選出をした場合に、ディンルーとオオニューラが圧倒的に不利なのがきつかった。初手でルナアーラと対面すればシャドーレイで瀕死に追い込める(下手をすれば落とせる)が、裏から出されると好き放題やられることが多かった。

 

【7.終わりに】

今シーズンを迎えるまで、私の最高順位はシーズン4の333位だった。SVからの新参者の私にとって、過去作の実績などというものはなく、唯一の比較対象が、この333位だった。

今シーズン最終日の午前8時、324位でレートは1999。「もう一戦だけ、いくか」とポストした。

100位の相手に負けた。

結果論ではなく、オオニューラに不要にテラスを切らずにキラフロルに草テラスを残していれば勝てた試合で、プレイミスだった。

もう一戦やって、また負けた。

終わった、と思った。

また333位を超えられないのか、と思った。

最高順位は一年以上も前のことになる。ランクバトルを始めて4か月だった。

今よりずっとプレイングは拙く、ポケモンのこともまるでわかっていなかった。

けれど、今よりずっと飢えていて、憧れていて、必死だった。

思えばそのときに使っていた構築も、当時流行っていた「セグカミラッシャ」を標榜しながら、ヘイラッシャがチョッキ、カミはHBドレインキッス、セグレイブは襷、という、相手にテンプレの幻想を見せてそれを裏切る種類の構築だった。

ルナアーラシャドーレイを撃つ度に、私の後ろで「ルナ様ー!」と歓声を上げて応援してくれる妻に、シーズン序盤、ルナアーラ構築のコンセプトを熱弁していたとき、「きっとそういうのが得意なんね」と言われた。そういうことなのかもしれなかった。

人は、原点から逃れようともがき、苦しみ、結局、原点を目指している。

シーズン4の最終戦を思い出した。おそらく同速の襷セグレイブ同士がHPを1ずつ残しての礫の撃ち合いになり、私は「運を、天に」と呟いてAボタンを押し、コントローラーを静かに床に置いた。

あれから、数えきれないくらい同じコントローラーのAボタンを叩いてきた。けれど、一度だって、あのときほど重いAボタンを押せたことはなかった。

今だって、それには敵わないけれど。

もしかしたら、二度と敵わないかもしれないけれど。

私は少し笑って、ボタンを押した。

そこからの二戦は、何かに導かれるように、圧倒的に得意なルギア構築とテラパゴス構築が相手だった。

相手のヘイラッシャにディンルーの地割れが当たった瞬間、私は静かにコントローラーを床に置き、ぬるくなったノンアルコールビールを少しだけ天に掲げた。

初めてランクバトルを共に戦ったルナアーラ、構築の顔であるキラフロル、私の「Sleep...」という不穏な呪文に何度も応えてくれたオオニューラ、今まで数千の試合に付き合ってくれたディンルー、ほとんど出さないヘイラッシャとウーラオス、その全てに。

不意に剣の舞を積んでくる恐ろしいコライドンにも、ディンルーを後出ししたら宿り木撃ってる黒バドレックスにも、ザシアンのいないザシアン構築にも、対戦中は憎しみしか覚えない受けループにすら、その全てに。

一度も出会うことなく別れてゆく、画面の向こうの名もなき対戦相手たち、その全てに。

ポケモンという、その全てに。

寝て起きたら、この刹那の気持ちは消え失せているのだろう。

ただ、今だけは、その全てに、乾杯を送りたいような気分だった。

 

最後まで読んでくれたなら、ありがとうございました。